家を売る理由は、転勤や住み替えなどさまざまですが、自分の家がどのくらいの価値があるのかほとんど分からない方も多いのではないでしょうか。
また、家のような大きい金額の売買は、人生において頻繁に行うことは少ないのが一般的です。そのため、家を売ることを考えた時、何から始めたら良いのか迷いがちでしょう。この記事では、家を売る時の流れや税金の費用について解説していきます。
家を売ることとは
家を売るに至った理由には、住宅ローンの返済が厳しくなったことでやむを得ないケースや、転勤などで急遽売却が必要になるケースなどが挙げられます。家を売る際はまず、目的を明確化することが大切です。
家を売る手順を知っておこう
家を売る際には、売却をスムーズに進めるために、先ずは目的を明確化することが大切です。その後は、以下のような手順で進めていきます。
- 近隣の類似物件の相場を把握する
- 不動産業会社を探し、査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動
- 売買契約を結ぶ
- 物件の引き渡し
近隣の類似物件の相場を調べるなどの準備期間を含めると、物件の引き渡しまでに平均で6カ月程度かかると言われています。
1~3:売り出すまでの準備~媒介契約(約1カ月)
不動産会社に査定を依頼する前に、近隣の類似物件の相場をインターネットや広告などを利用して把握しておきます。その後、不動産会社に査定を依頼し、事前に把握した類似物件との相場を比較しながら検討します。
すぐ売りたい人はインターネットで周辺の物件を調べるだけで、物件相場の目安を確認できます。時間をかけても大丈夫な人は、実勢価格や不動産の広告など幅広く価格を調べて、相場の目安を確認していきましょう。
査定には、一括査定サイトなどの簡易査定と不動産会社のスタッフが訪問して行う訪問査定があります。簡易査定の場合は、住所や間取りなどの物件情報が分かれば良いため、登記簿謄本などが不要なケースがほとんどなので、手軽で仕事で忙しい方にも便利です。。提示された査定額に納得できたら、物件を売り出すために不動産会社と媒介契約を結びます。
実勢価格などを調べる場合はこちらの記事を参考にしてください。
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土地査定の方法について詳しく知りたい方はこちらを参照してください。
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4~6:売却活動~物件の引き渡し(約5カ月)
媒介契約後は、不動産会社が折込チラシなどの広告に掲載するなどして売却活動をスタートします。購入希望者が現れると、物件を見学してもらう「内覧」を経て、売買契約に進みます。
売買契約後は、契約時に協議した日時に物件を引き渡して売却が完了します。なお、戸建てもマンションもほぼ同様の手順で進めるのが一般的ですが、マンションの方が短期間で完了するケースが多いのが現状です。
お金を残すなら高く売る、早く売りたいなら安くする
家を売る目的を「お金を残す」か「早く売る」かどちらかに絞って明確化することで、目的に見合った方法での売却が実現しやすいと言えるでしょう。
例えば、相続した家を売る場合、現金化することで相続人全員が平等に分割できるというメリットがあります。このような目的がはっきりしている場合、多少時間はかかってもできるだけ高く売る方法を模索できます。
また、転勤や離婚などの理由によってできるだけ早く売りたい場合、金額が安くても早く売る方法の検討ができます。まずは売ってどうしたいのか目的をはっきりと定めることが、売却へのスタートともいえます。
「すぐに売りたい」と「高く売りたい」は同時に成り立たない
「すぐに売りたい」と「高く売りたい」という希望は、同時に成り立たせることが難しいと考えられています。家の価格は、立地条件や近隣の類似での売買実績を考慮した相場をベースにして決められるのが一般的です。
そのため、すぐに売りたい場合は、相場よりも低い価格設定で売りだすことがスムーズな売却に繋がりやすいと言えるでしょう。一方で高く売りたいと考えていても、購入希望者は良質な物件をできるだけ安く購入したいという心理が働くため、相場からかけ離れた価格での販売は敬遠されがちです。
すぐに売りたいのであれば、価格を下げての価格設定は止む終えません。高く売りたいという希望があれば、無駄に値下げをせず、売れるまでゆっくりと買主を探すというの方法もあります。時間をかけての売却を考えましょう。
納得した売却を目指すには優秀な不動産会社との契約が必須
家を売る際には、個人で買い手を見つける方法もありますが、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。不動産会社に仲介を依頼する場合、媒介契約を結ぶ必要があります。
媒介契約を結ぶと、売却活動を行ってくれるだけでなく、物件を引き渡すまでのサポートが受けられます。不動産会社によっては戸建ての売買に長けているなど得意分野が異なるため、不動産会社選びが重要です。自身が売りたいと思う不動産と同じ分野が得意であれば、担当者は知識が豊富なので、売主にアドバイスをくれるでしょうし、買主に不動産のどこをアピールすればいいのかも熟知しています。
得意な物件を扱ってもらった方がパフォーマンスも出やすく、不動産の売却もスムーズに行えるはずです。
不動産会社の探し方
不動産会社の得意分野を見つける方法としては、仲介で多く扱っている物件の種類で判断することです。また、インターネット上には多くの口コミが投稿されているため、このような口コミを参考にするのも一つの手段です。
家を売る際の心強い味方とも言える不動産会社ですが、まず一括査定サイトを活用して複数社に査定を依頼するのが得策です。土地は1つとして同じものはなく、立地や形、広さなどによって価格は異なり、不動産会社によってその査定額も異なります。査定額には幅があるので、複数社を比較・検討することで賢く売却することができます。
売るのが先か買うのが先か
住み替え目的で家を売る場合、その多くは家を売った金額で住宅ローンを完済すると同時に新たに住宅ローンを借り入れて購入することになりますが、これらのタイミングは合わないことが多いです。そのため、住み替えの場合は、家の売買のタイミングを見極めることが大切です。
先に売却する場合
売却が先の場合、売却した物件を引き渡す日までに新居が準備できなければ、賃貸などの仮住まいが必要になります。その期間は住宅ローンはなくなりますが、仮住まいの賃料が発生してしまいます。また、別の費用がかかります。売却後に住むための仮住まいを探したり、家財道具など荷物を保管する場所も必要です。トランクルームやマンスリー賃貸などの短期間賃貸住宅を利用しなければなりません。
先に新居を購入する場合
新居を先に購入する場合、慎重に選ぶことができ、家の売却前に新居に転居できるのがメリットです。また、売却する家に家具を置いておかなくてよいので、買主に家を広く見せることができたりクリーニングなどもやりやすくなります。しかし、新居の決済までに売却できていなければ、売却までの期間は新居とこれまでの住宅ローンをどちらも返済しなくてはなりません。
また、売却期間が長いほど負担が大きくなるため、手持ちの資金が確保できない場合は避けた方が良いでしょう。
仲介手数料とは何か?
物件の売却活動を不動産会社に仲介してもらう場合、媒介契約を結びます。その後、無事に売買契約が成立すると、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料とは
仲介手数料とは、不動産の売買が成立した際に生じる手数料のことで、物件の売却活動や売買契約などのサポートに対する対価です。ただし、売買契約成立後に買主の都合などで無効になったり取り消された場合は支払う必要はありません。
仲介手数料には、通常行われる広告費や購入希望者の現地案内などに関わる費用が含まれていますが、新聞などに不動産の広告を掲載するような費用が多くかかる広告は特別扱いとなり、別途費用が請求されます。
不動産会社が受け取る仲介手数料には、宅地建物取引業法により上限額が定められています。仲介手数料の上限は以下のような方法で算出され、売却価格に応じた上限が設けられています。
仲介手数料は必ず上限を支払わなければならないという訳ではありません。上限を越さないのであれば、不動産会社が利益を考慮して設定した仲介手数料を求められます。
▼400万円を超える物件の上限額の計算方法
媒介契約の種類と特徴
不動産会社が売買を仲介する際には、売り手との間で「媒介契約」を結びます。媒介契約は主に3種類あり、以下のように内容が異なります。
一般媒介契約
一般媒介契約は複数の不動産会社と同時に契約できるので、条件のいい物件なら、不動産会社同士を競争させ、価格を上げることもできます。しかし、、不動産会社同士が情報を共有するシステム「レインズ」への登録が任意であるため、登録がされない場合があります。登録されないと物件情報が広く広がらないので、買主の目に留まる機会も減ってしまいます。
また、売却活動状況の報告が義務ではないため、売り手から不動産会社に問い合わせて進捗状況を確認する必要があります。
専任媒介契約
専任媒介契約は複数社と同時に契約できませんが、契約から7日以内に「レインズ」への登録が義務づけられているため、より多くの方の目に情報が行き届きやすいです。
また、売却活動状況について、2週間に1回以上という頻度で売り手に報告義務があるため、状況に応じた対策を練りやすいと言えるでしょう。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、専任媒介契約と同様に複数社と同時に契約できませんが、契約から5日以内に「レインズ」への登録が義務づけられています。また、売却活動状況について、1週間に1回以上という頻度で売り手に報告義務があるため、進捗状況を把握しやすいです。
ただし、一般媒介契約と専任媒介契約では、売り手が自ら買い手を見つけた場合も取引できますが、専属専任媒介契約では認められていません。
このように、媒介契約には3種類ありますが、「レインズ」への登録が義務づけられており、売却活動状況が把握しやすい専属専任媒介契約を選択するケースが多いのが現状です。
売れる物件を持っている、複数社と連絡のやりとりをしても構わない人は一般媒介、複数社とやり取りが難しく、自分でも買い手を探している人は専任媒介契約、特定の仲介業者だけに取引を依頼したい人は専属専任媒介契約がおすすめです。自分の不動産との相性などをみて、契約は選びましょう。
不動産会社に不動産の仲介を依頼する際は、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には専属専任媒介契約と専任媒介契約、一般媒介契約があり、どの媒介契約を結ぶかは不動産の売主と不動産会社との話し合いで決まります。どの媒介契約を結[…]
仲介手数料は値引き交渉できる?
媒介契約の特徴を把握していなければ、不動産会社から勧められるまま専属専任媒介契約を結ぶ可能性が高いと言えるでしょう。しかし、売り手としては、むしろ複数社に任せた方がより多くの人の目に留まり購入希望者が増えることから、成約の可能性は上がります。
そこで、仲介手数料の上限が請求されることを考えた場合、「仲介手数料を安くする代わりに、専属専任契約を締結する」といった提案をすることで、仲介手数料の値引き交渉がしやすくなります。
仲介手数料が格安な場合に注意すること
不動産会社の中には、「仲介手数料が安い」というキャッチコピーで集客しているケースもありますが、格安な仲介手数料をうたった会社との契約に注意が必要です。
なぜなら、このような不動産会社の場合、仲介手数料を格安にする代わりに広告宣伝費などの営業にかかる費用を別途請求される可能性が考えられます。本来であれば、通常の売却活動にかかる費用は請求できませんが、最終的な請求額までを詳細に確認しておいた方がいいでしょう。
家を売るときに掛かる税金
家を売る際には、売却した金額だけを手にできるという単純なものではなく、売ったときの状況に応じて税金が掛かります。ただし、特別控除が設けられている場合もあるため、積極的に利用するとお得です。
相続税と登録免許税
家を相続した場合、相続人全員で平等に分割するために、売却という手段を用いるケースがあります。しかし、家を相続すると、登録免許税と相続税が発生します。
登録免許税とは、不動産の名義変更をする際に掛かる税金のことで、相続の場合、固定資産評価額に0.4を乗じた金額が税額となります。一方の相続税とは、財産を相続した際に掛かる税金のことで、一定の金額を超える場合は課税の対象となります。
相続税の対象となる一定の金額とは、基礎控除のことを指しています。基礎控除額は、以下の計算式が定められており、600万円に法定相続人の数を乗じた上で3,000万円を足して算出されます。
ただし、相続対象が配偶者・子・親以外の場合、相続税が「2割加算」されることになっているため、注意が必要です。
つまり法定相続人が配偶者、子どもが3人の場合、3,000万円+600万円×4人となり基礎控除額は5,400万となります。
譲渡所得税
家を売った際に出た利益のことを「売却益」といい、譲渡所得税の課税対象となります。譲渡所得税は、所得税と住民税で構成されており、2011年から25年間に限っては、東日本大震災の復興支援金として復興特別所得税が含まれています。
この税金は、家の所有期間に応じて税率が異なり、5年以下の場合は短期所得税、5年を超える場合は長期譲渡所得税に分類されています。譲渡所得は、売却価格から家を購入した時の取得費と売却に掛かった譲渡費用を差し引いて算出され、税率については、以下の表に示しています。
所得税(税率) | 住民税(税率) | |
短期譲渡所得税 | 30.63% | 9% |
長期譲渡所得税 | 15.315% | 5% |
なお、売却益が出た場合、譲渡所得税を納税するために家を売った翌年に確定申告する必要があり、その時に計算して納税します。また、売却益が出ない、むしろ損失してしまった場合は、所得は発生していないので税法上、確定申告の必要はありません。
特別控除を活用する
家を売った際に発生する税金は、特別控除が受けられる場合があります。現在は、軽減措置が充実しているため、積極的に利用することをおすすめします。現在、居住用として使用している家を売る場合、3,000万円の特別控除が受けられます。
また、売買契約書に対して課税される印紙税は、2021年3月31日までに作成された契約書であれば、契約金額に応じた軽減措置が適用されます。例えば、1,000万円以上5,000万円以下の契約金額の場合、通常2万円が1万円に軽減されます。
名義変更する際に課税される登録免許税は、2021年3月31日までに登記を行えば、通常2%の税率が1.5%に減税されます。
土地や住宅などの不動産を売却する際、不動産の取引額が大きいほど多額の税金がかかります。税金の知識やその控除(節税)方法を知らないで不動産を売却すると、支出が多くなって損をしてしまいます。そこで、費用を抑える工夫が必要となります。[…]
住宅ローンが残っていても家を売ることはできるのか
家を売りたいと考えていても、住宅ローンを借り入れている場合は、住宅ローンの完済が前提となります。そのため、先ずは住宅ローンの残債を確認することが大切です。
住宅ローンの残債を確認する
住宅ローンを返済中の家を売りたい場合、抵当権が設定されているため、住宅ローンを完済することが前提です。抵当権とは、住宅ローンは金融機関が個人に対して融資する際に、万が一返済できなくなった場合にも損が出ないよう物件を差し押さえるための権利です。
そのため、住宅ローンの残債を確認した上で、家を売却したら得られる資金と自己資金と調整しながら完済できることを目指すようにしましょう。
住宅ローンの残債がある場合の売却方法
家を売っても住宅ローンを完済できない場合、住み替えや任意売却という方法も選択肢の一つです。
住み替えの場合
住み替えであれば、家を売った金額で残った住宅ローンを補い、次に購入した家のローンに上乗せする方法が可能です。
家を売った時の金額だけでは住宅ローンが完済できない場合、自己資金で補うことで問題は解消されます。ただし、その際には分割返済は利用できないため注意が必要です。
任意売却の場合
あらゆる方法を駆使しても住宅ローンが完済できない場合、任意売却という選択肢もあります。ただし、任意売却すると、住宅ローン未納者リストに載ってしまうため、軽い気持ちで任意売却を選択して家を手放すのはおすすめできません。
任意売却という選択をしないためにも、家を手放す前に自分の家の価値を知り、返済できるように準備しておく必要があると言えるでしょう。
家を売るためにできることから始めよう
家の価値を知るためには、最寄りの不動産会社に行くのも一つの方法ですが、言われるがままに媒介契約に持ち込まれる可能性があります。そこで、インターネットを使用すれば簡単に情報を収集できるだけでなく、複数社に査定の依頼もできます。
家を売るために初めの一歩を踏み出す
家を売るためには、不動産会社探しから引き渡しまで、慣れない手続きが続くので決して簡単ではありません。しかし、相続した誰も住まない家をそのまま放置して固定資産税を払い続けたり、子供達が大きくなり手狭になった家に我慢しながら住み続けるのはもったいないと思います。招待的に家を売りたいと考えているのであれば、今勇気を出して一歩を踏み出してみましょう。
買い手がつきやすい家を知る
家をできるだけ高く売りたい場合、ニーズの高い家の条件を知っておくことも大切です。例えば、築5年以内の築浅物件の場合、新築よりもお得に購入できることから、人気が高い傾向にあります。
築年数が古い場合、更地にして売り出した方が活用方法の幅が広いため、買い手がつきやすい傾向にあります。ただし、建物の解体費用が必要となり、35坪の木造住宅では約85万円程度の費用が掛かります。
また、近年は、自分好みの住空間を求めてリフォームやリノベーションすることを前提に、中古物件へのニーズも高まっています。そのため、積極的にリフォームする必要はありませんが、水回りなどの設備が古い場合は、内覧時の印象を良くするためにもリフォームを検討しましょう。
家を売るための情報を集める
家を売るための初めの一歩は、インターネットを使って売却に関する情報を収集したり、家の価値を知るために一括査定を依頼してみるなど、簡単にできるところからのスタートが良いでしょう。
目的を明確化して高くスムーズに家を売ろう
家を売るためには、まずは目的を明確かすることが大切です。なぜなら、目的を明確化することで、目的に見合った不動産会社を探し出し、納得できる売却が実現しやすくなります。
また、不動産会社によって査定額が異なるため、一括査定サイトなどを利用して複数社に査定を依頼し、査定額の根拠を的確に示してくれる優良な不動産会社を見つけましょう。
税金や契約など家を売る際には難しいことがたくさんありますが、不動産会社や役所などがサポートしてくれるので、分からないことは都度聞きましょう。ただし、不動産の価格などは相手の思惑などが入るので、ある程度知識をつけて価格設定に望むことが大切です。
運営会社 | 株式会社LIFULL | |
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運営開始時期 | 2014年 | |
対象エリア | 全国 | |
累計利用者数 | 612万人 | |
提携会社数 | 約1,700社 | |
同時依頼社数 | 6社 |