法改正もある不動産売却時の瑕疵担保責任とは?【監修記事】

不動産を売却する機会は一生のうちにそう何度もありません。そのため、売却時にトラブルが起きないかと不安を感じる人も多いでしょう。

トラブルを回避するために不動産売却時に必ず知っておきたいことが瑕疵(かし)担保責任です。

瑕疵とは、対象物に認められる「キズ」や「欠陥」です。売主は売却後に不動産に瑕疵が見つかると、大きな負担を強いられることがあります。

ここでは、瑕疵担保責任とはどのようなものかを理解し、リスクを減らすための方法を解説しています。

正しく理解して不動産の売却に備えましょう。

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福谷陽子
【監修】福谷 陽子
京都大学法学部卒業の元弁護士
保有資格:司法試験合格、簿記2級
不動産の売買や相続、破産管財、任意売却など多種多様な経験を積んでいる。

不動産売却時における瑕疵担保責任の重要性

瑕疵担保責任の重要性

瑕疵担保責任を正しく理解していないと、大きなトラブルに発展する可能性があり、瑕疵担保責任がどういうものかをしっかり熟知しておきましょう。

瑕疵内容によっては契約解除の可能性

瑕疵担保責任とは、不動産の売買を行う時に売主が把握しておらず、買主も契約時に発見できなかった不動産の欠陥や不具合について、一定期間、買主が売主に対して損害賠償や補修や修理のための費用負担、場合によっては契約解除を請求できるものです。

ここで気を付けなければならないことが、売主はその瑕疵について不注意や過失がなくとも責任を負わなければならない点です。

通常、自分が長年住んでいた家であれば、住めないような瑕疵は自分で見つけていることがほとんどでしょう。

しかし目に見えない場所でゆっくりと瑕疵の原因となる劣化が進んでいる場合もあり、素人では全ての瑕疵を確認することは難しくなります。
このような場合でも、売却後に住めないような瑕疵が発見されたら、買主は売買契約の解除を請求できます。

賠償が行われない場合は契約解除の可能性

不動産の売却後に瑕疵が見つかると、売主は瑕疵担保責任の期間中、買主に対しては補修や修理の費用を負担したり損害賠償請求をしたりする責任を負います。

また補修不能で瑕疵によって契約の目的を達成できない場合、契約自体を解除される可能性があります。

瑕疵担保責任は、民法上で定められた不動産を取引する際のルールで、不動産の取引を安全に安心して行えるようにするためのものです。

民法上では、買主が瑕疵を知ってから1年以内なら瑕疵担保責任を追及できる(瑕疵を知らない場合、引き渡し後約10年間)と定められています。

ただし、個人間の売買の場合には、売買契約書に特約を付けることで瑕疵担保責任の期間を短縮あるいは免除できます。買主と協議して瑕疵担保責任の期間や範囲の取り決めを行い、売買契約書に明記するのです。

不動産売却時に課せられる瑕疵担保責任の内容

不動産売却時の瑕疵担保責任の内容

リスクを回避するためには正しい知識を備えることが大切です。どのようなものが瑕疵として扱われるのか。また、瑕疵が見つかった場合の対処の仕方などをみてみましょう。

瑕疵に対する費用負担

瑕疵担保責任期間を短縮したり免除したりする特約をつけていない場合、買主が瑕疵担保責任を発見して1年以内に請求すれば、売主が修復やその費用を支払わないといけません。

瑕疵の内容としては、たとえば構造躯体部の瑕疵や、雨水の侵入を防ぐための部分の瑕疵、
契約内容にもよりますが、基本的には構造躯体部の瑕疵(雨漏り)、シロアリ被害、建物の傾き、腐食等があります。

また、土地に想定外の埋設物がある場合にも瑕疵担保責任が発生するケースがあります

土地売却時に地盤調査をして鑑定書を作成し、買主側に提示すると瑕疵担保責任を免除する特約をつけてもらいやすくなります。

費用が数十万円かかりますが、瑕疵担保責任を負って払う金額よりも安く済むケースが多いので、できれば調査を行ったほうが良いでしょう。

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土地を売却する際の地盤調整

一般的に引き渡しから2~3か月の期間

一般に、個人間で中古物件の売買を行うときには「瑕疵を知ってから1年」の瑕疵担保責任の期間を短縮し、「引き渡し後の2カ月から3カ月」とするケースが多数です。瑕疵担保責任を免除するケースもあります。

ちなみに、宅地建物取扱い業者が扱う新築物件の販売の場合、瑕疵担保責任の発生期間を「物件の引き渡し後10年」のより短縮することができません。

不動産の瑕疵内容は4種類

不動産に起こる瑕疵と言えば、物理的な瑕疵を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、その他にも注意しなければならない瑕疵があるので、ここでは不動産売却時に起こる瑕疵についてみてみましょう。

物理的瑕疵

不動産の売買の中で一番多い瑕疵が物理的瑕疵です。

水漏れや雨漏り、シロアリによる被害、耐震強度不足など、直接生活に影響する瑕疵です。

物理的瑕疵には素人には確認することが難しいものが多数あります。

法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、法律上の制限を受ける場合の問題です。例えば建築制限や分筆禁止、用途の限定などが該当します。

再建築不可の物件や建築制限がある場合、通常は販売の際に表示義務されます。

そのため、これらのことは買主も説明を受け納得済みでの購入となり、後日、責任を追及されることは少ないでしょう。

事前にきちんと重要事項説明を行って瑕疵を買主に認識させれば、通常法律的瑕疵の瑕疵担保責任を負うことはありません。

しかし、建築制限があることや、建ぺい率や容積率がオーバーしていること、将来、道路の建設予定地であることなどを知っていて告知しないと、告知義務違反になりますので、知らずに説明しなかったとしても責任が発生します。

中には、昔から立っている建物だとその時の建築基準は満たしていても、都市計画法などの法整備が行われたのちの建築基準を満たしていない場合があるので気を付けましょう。

心理的瑕疵

その家に住むにあたって心理的に負担になることを心理的瑕疵と言います。

例えば、物件内でで病死したり、自殺者がでたり、殺人が起こったりした物件が該当します。

また、自然死や孤独死も心理的瑕疵となる可能性があります。

心理的瑕疵については人の受け取り方によって異なり、気にする人気にしない人がいます。

自分が気にならないからとしても買主に伝えないと、後々トラブルとなり隠れた瑕疵と同じように責任を問われる可能性があります。わざと告知を怠った場合、契約解除されたり損害賠償請求を受けたりするケースもあるので把握していることについてはきちんと告知をしましょう。

環境的瑕疵

周辺環境も瑕疵に該当する場合があります。

葬儀場や産業廃棄物処理施設、暴力団事務所、宗教団体の施設

などが挙げられるでしょう。これらの施設の側には住みたくないという人も多くいます。

そのため、周辺にこれらの施設がある場合には初めに伝えておくべきです。

また、繁華街などがそばにあり夜中でも人通りが多く騒音があることやご近所トラブルも瑕疵の原因になることがあります。

周辺環境の瑕疵は、自分が気にならないことでも些細なことでも全て伝えておくことで、トラブルの回避につながります。

なお、環境的瑕疵で訴えられた際は、建物自体に瑕疵があるわけではないため、契約解除までは認められなかった裁判例があります。一方大体売買価格の10%~20%の損害賠償が認められたケースもあります。

瑕疵担保責任は法改正される予定

2020年4月1日に民法が改正され、瑕疵担保責任は廃止されます。代わりに契約不適合責任というものに変わります。

契約不適合責になると売り主の責任は瑕疵担保責任より重くなります。これまで隠れた瑕疵に対する責任でしたが、「隠れた」かどうかは問題ではなくなり、「契約内容に沿っているかどうか」のみが重要となります。

買主の請求権が広がり、対象物が契約に沿っていなかった場合には売主に修繕を依頼できる追完請求をできるようになります。

追完請求しても売り主が応じない、または修繕自体ができない場合には代金減額請求も可能です。損害賠償請求も可能ですし、契約の目的を達成できる場合でも契約解除をできるようになります。

こういった法改正により、買主の権利は広がりますが売主の負担は大きくなります。売主と買主との間の契約の方法がさらに重要になるでしょう

瑕疵担保責任のリスクを回避する方法

瑕疵担保責任を回避するには
瑕疵担保責任のリスクを回避するためには、保険を利用することが効果的です。またホームインスペクションを利用することでもリスクを減らせます。ホームインスペクションとは、建物の状況を調査することです。プロに不動産を調査してもらうことで、隠れた瑕疵を発見したり将来的な修繕の見積もり費用を明確化したりできます。

既存住宅売買瑕疵保険に加入する

不動産の瑕疵で必要になるケースのある躯体部の補修や外壁の工事は、高額になることが多く時間もかかるので、売主にとっても買主にとっても大きな負担となります。そのため、瑕疵が見つかった時にこれらの補修や修理をスムーズに行うための保険があります。

たとえば既定の検査を行って既存住宅売買瑕疵保険に入っておくと売主が買主に対して負う瑕疵担保責任の費用を保険で支払えます。この保険は、国交省が指定した「住宅瑕疵担保責任保険法人」が運営しています。

保険期間は5年と1年を選ぶことができます。500万円、1,000万円を限度に瑕疵担保の費用が保険会社から支払われます。保険料は床面積100㎡~125㎡の一戸建てで期間を5年、保険金額1,000万円としたときに45,000円程度です。

また、買主が売主に対して修理や賠償請求しても履行されなかった場合、買主は直接保険会社に費用を請求できます。

この保険に加入することで、瑕疵が見つかった場合にも補修や修理に関する費用を保険でカバーできるため、大きな費用の負担を強いられるリスクを減らせます。

ただし、土地についての瑕疵担保責任には使えないので、気をつけてください。

保険の対象となるのは、柱や外壁など構造上の耐力的に重要な部分や、窓や屋根などの雨水の侵入を防ぐ部分です。

不動産会社による保証サービス

不動産会社にも瑕疵担保責任に関する保証サービスがあります。

保証期間や範囲は不動産会社によって異なりますが、2年間程度とする例が多いようです。

内容としては、引き渡しから3カ月程度の間不動産会社が売主の瑕疵担保責任を引き受けるもの、、買主が瑕疵を見つけた場合の補修費用を負担するものなどがあります。

限度額は200万円から500万円程度になることが一般的です。

近隣住民に不動産を購入してもらうケース

不動産を売却する時に、近所の人に購入してもらえれば瑕疵担保責任のリスクを下げやすくなります。

周辺の住民なら環境的瑕疵や心理的瑕疵について理解していることが多く、道路や周辺の開発や整備状況に関しても知っているものだからです。

全くその地域に馴染みのない人に売却するよりも、その地域を理解した人に売却するほうが、瑕疵担保責任のリスクを下げやすいといえます。

瑕疵担保責任の注意点とポイント

瑕疵担保責任の注意点
瑕疵担保責任のリスクを減らすには、正しく理解して備えることが大切です。現状有姿での引き渡しでも注意が必要です。

契約上の取り決めがなくても責任が発生する

売買契約の瑕疵担保責任は民法上に定められているものです。

契約時に取り決めをしていなくても、売主は自動的に責任を負うことになります。

契約の際に瑕疵担保責任をどのように取り決めるのか相談して限定・免除するのが得策です。

売主に有利な内容に修正することもできる

民法上瑕疵担保責任は「買主が気づいてから1年間」となっています。

しかし個人間での売買の場合には、売主買主同意のもと、期間や保証の範囲などを決めることができます。「契約自由の原則」があるからです。

「契約自由の原則」は、当事者間で契約内容を自由に決められるものです。

買主の合意を得られるのなら、瑕疵担保責任の期間を短縮したり、免責したりできます。

ただし、瑕疵担保責任を免責にすることを理由に、大幅な値下げを要求されることもあるので注意が必要です。

現状有姿は瑕疵担保責任の免責ではない

不動産の広告やチラシを見ていると、「現状有姿で引き渡し」と表示されているものを見かけます。

これは、現状のままでの不動産の引き渡しを意味します。

つまり契約から引き渡しまでの間に不動産に変化があってもそのままでの引き渡しで良いとするものです。

「現状有姿」によって瑕疵担保責任が免責されるわけではありません。

現状での引き渡しにはなりますが、その後、瑕疵が見つかれば期間内であれば特約がない限り責任を負うことになります。

そのため、「現状有姿での引き渡し」と表示しての売却の際にも、売買契約書には瑕疵担保責任の期間や範囲を明記することが重要です。

不動産売却の交渉材料にできる

当然のことですが、売主も故意に瑕疵を隠して売却するわけではありません。

売主にとっても瑕疵がないことがベストです。

しかし、瑕疵は起こる時期やどのような瑕疵が起こるかは把握しきれるものではありません。

瑕疵が見つかった場合の補修費用もどれだけかかるかを想像できないことがほとんどでしょう。

大きな支払いのリスクを避けるためにも、瑕疵担保責任を免責できるとその後の心配が不要となってストレスを減らせます。

瑕疵担保責任を免責にしたい場合、売却価格を値引きすることで買主に受け入れてもらえる場合があります。

売却額にこだわらなくて良いのなら、売却後のストレスやリスクを軽減するため、瑕疵担保責任の免責と引き換えに値引きを提案するのも手です。

不動産売却を進める際はまず一括査定サイトを利用しよう

信頼できる不動産会社を探そう
近頃ではネット上に多くの不動産の一括査定サイトが存在し、気になる人も多いのではないでしょうか。

不動産の一括査定サイトは、売却仲介を依頼する不動産会社を選ぶ時や、所有している不動産の価値を知りたい時に利用できるサイトです。

不動産の売却を行う時には、有利に進めるためにも不動産の相場価格の把握が欠かせません。

そのため複数の不動産会社に査定を依頼して、査定額を比較する方法が有効です。

一括査定サイトを利用すると、数分の入力で複数の不動産会社に査定を依頼することができます。

自宅から時間も手間もかからず依頼できて便利なので、売却時には多くの人が利用しています。

一括査定サイトなら所有する不動産の売却に適した不動産会社をピックアップしてもらえます。

多くのサイトで厳しい審査を通った不動産会社のみが登録されているので、トラブルに巻き込まれる可能性も低くなります。

不動産の売却時には所有している不動産に合った不動産会社を選ぶと、高値での売却につなげられるのですが、不動産会社を見極めるのは素人にはなかなか難しいものです。

それも一括査定サイトなら自動的に行ってもらえます。

相場価格を把握することで適切な販売価格を設定できるため、早期売却につなげられます。長期間に渡って買主が見つからず、値下げをし続けるという事態も避けることができるでしょう。

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瑕疵担保責任の内容はよく理解して売却後のトラブルを回避しよう

瑕疵担保責任を理解して不動産売却を
瑕疵担保責任は売主にとって大きな負担になる場合があります。

出来る限り負担を減らすためには、事前に対策することが重要です。

瑕疵担保責任とはどのような時に発生するのかや、どうすればリスクを減らすことができるかを正しく理解しておきましょう

ここでの瑕疵担保責任に対する知識を活かし、不動産を売却する際には細心の注意を払って備えましょう。

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