悪徳リフォーム業者の実態と業界の構造の話

残念ですが、世の中どこにでも悪い人はいるものです。
リフォーム業界においても、訪問販売型の営業で悪徳業者が横行した時代があり、大きな社会問題になりました。

被害にあったのは主に高齢者で、お金を持っていて情報に疎く、知識も少ないという格好のターゲットになってしまったのです。
消費者側の意識向上から、以前ほどではないとはいえ現在でも被害は続いています。

ところで、最近ではリフォームを取り扱う会社が多様化して、建設業界以外でも当たり前にリフォームの注文を受けています。
どうして関係ない業種なのに、リフォームをできるのか不思議ではないでしょうか?

今回は、リフォーム業界の内側に入り込み、業界の構造にも触れていきます。
以下の記事でリフォーム業者の選び方を紹介していますが、リフォーム業者で迷っているなら、応用編として少しでも参考になればと思います。

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リフォーム業者選び

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リフォーム業者に許可はいらない?

衝撃的な事実を先に言ってしまうと、この記事を読んでいるあなたも、その気なら今すぐにでも、リフォーム業者として営業することができてしまいます。
しかも、リフォームどころか、日曜大工の経験すら必要ありません。

受注と工事は別のもの

何の許可もなく、誰でもリフォーム業者になれる理由は、リフォームの受注をする人が、工事をする人とは限らないからです。
自分で注文を受けて、工事をしてくれる業者を探せば、立派に営業は成り立ちます。

方法は2つあり、1つは工事業者に見積もりから工事まで任せてしまう方法です。
そして、工事業者からバックマージン(紹介料)をもらえば利益になります。

もう1つは、工事の契約を自分で結び、マージンを抜けるだけ抜いて、工事を下請業者に丸投げしてしまう方法です。
この場合は、自分で工事の契約をしているのですが、下請業者に丸投げするので、工事の知識も経験も必要としません。

紹介・手配に過ぎない前者の方法ならまだしも、後者では工事の契約もしています。
工事をできない人が、工事を請け負うことに何の問題もないのでしょうか?

500万円未満の工事に許可は不要

リフォームは、まぎれもなく建設業の分野で、建設業を営むには一定の要件をクリアして、行政の許可(建設業許可)を受けなくてはなりません。
しかし、500万円未満の工事を請け負う際には、許可を不要とする規定があります。

部分リフォームなら100万円以下もありますし、高くても300万円以下なので、大抵のリフォームは許可なしで請け負うことができます。
これが、誰でもリフォーム業者になれて、悪徳業者が横行した原因です。

500万円未満の工事を許可不要としたのは、建設業を営むすべての事業者が、建設業許可の要件を満たすにはハードルが高く、小規模な事業者を否定してしまうからです。
職人の集まりから構成される小規模な事業者は多く、例外を設けずに法律を適用すると、現場に与える影響が著しいと考えられています。

その代わり、リフォーム業者を含め、無許可の建設業者が増えてしまうという、悪影響も引き起こしてしまいました。
そこで、建設業の許可を受けたリフォーム業者は、優れているのか考えてみましょう。

建設業許可を持つリフォーム業者は優れている?

建設業の許可を受けたリフォーム業者は、行政が目を光らせますし、毎年決算報告もしなくてはならず、許可を失わないためには適切な工事を行わなくてはなりません。
そう考えると、建設業の許可があれば、適切な工事が担保されていると感じます。

ここでもう一度、誰でもリフォーム業者になれる理由を思い出してください。
受注=工事とは限らないので、建設業許可のあるリフォーム業者なら、自分で工事をすると想像してしまうのは思い込みです。

もちろん、自社施工する能力があれば、リフォーム業者が工事をすることもありますが、自社施工できない工事や、スケジュールが無理でも下請を使って受注は可能です。

リフォームを支えているのは下請業者

建設の工事現場は、専門工事を担当する複数の下請業者が工程に合わせて出入りし、受注した元請が工事全体を統括管理する役割を担っています。
元請業者は、自分で工事することもあれば、まったく工事しないこともあります。

建設業許可があってもなくても、実際に工事するのが下請業者であれば、結局のところ下請業者の施工能力でリフォームの質は決まります。
ましてや、下請に丸投げしてしまえば、元請は統括管理すら行いません。

つまり、下請に丸投げする前提なら、あなたが受注しても、大企業が受注しても同じ工事結果になるのがリフォームです。
そして下請業者の多くは、資本的な理由で建設業の許可を受けていないでしょう。

日本全国で行われるリフォームは、建設業の許可を受けていない無数の下請業者が支えており、許可があるから良い工事ともならないのです。
ただし、リフォーム業者を選べるなら、許可を基準にしても間違いではないです。

建設業許可で得意な工事を判断できる

建設業の許可は、工事別で28種類(専門工事は26種類)にも分かれており、それぞれの工事で個別に許可を受ける仕組みになっています。
そのため、許可を受けている工事の種類を確認すれば、得意な工事もわかります。

許可を受けていない工事でも、500万円未満なら請け負えますが、少なくとも許可を受けている工事は、得意分野だということです。

建設業許可を基準にするときの注意点

建設業許可を基準にリフォーム業者を選ぶ場合、次の点に注意してみましょう。

  • 工事請負契約する業者が許可を持っているか確認する
  • 許可の種類で得意工事を確認する
  • その業者が一部でも工事をするか確認する

最後に挙げた、一部でも工事をするかどうかですが、せっかく許可業者を選んで契約したのに、許可を受けていない下請業者に丸投げされるのでは、発注する側として残念な気持ちになってしまうため取り上げました。

また、工事の質が悪いことを下請のせいにする業者もいて、トラブルになりやすく、自社施工か確認しておきたいところです。

リフォーム業者の丸投げと法令違反

これまで、再三に渡りリフォーム業者は工事の丸投げをすると説明してきましたが、建設業における丸投げ(一括下請負)は、建設業法で禁止されています。
しかし、丸投げにも抜け道があり、民間工事で発注者の承諾を受けたときは、丸投げが許される例外規定が存在します。

では、リフォーム業者が、事前に「工事は下請に丸投げします」と言うでしょうか?
答えはノーで、そんなことを言うと契約できなくなるかもしれないので言いません。

それでは、リフォーム業者が法律違反をしているかというと、それもノーです。
法規制を逃れるため、工事請負契約書には特定の文言が約款として記載されており、サインしてハンコを押せば、丸投げを承諾したことになります。

丸投げが禁止されている理由

消費者がリフォーム業者を選ぶ際、その業者の施工実績や社会的な信用などを基にして、時には複数の業者に見積もりを依頼し、最終的に契約へ至る流れです。
契約に至った業者は、消費者から施工に対する信頼を得ているのですが、丸投げが許されてしまうと、その信頼を裏切ることになります。

また、丸投げには中間マージンの搾取が不可欠で、下に流れるほど工事金額は安くなり、労働条件が劣悪になって、工事の質も落ちていきます。
その被害は消費者が受けることになり、丸投げした業者にしか利得がありません。

丸投げする契約書には特定の文言がある

前述の通り、リフォーム業者は事前に伝えると契約に響く丸投げを、親切に教えてくれることなどなく、発注者も承諾したつもりはないことが良くあります。
しかし、工事請負契約書(約款)を良く見てみると、丸投げするリフォーム業者は、必ず次のような文言が入っています。

「受注者は、工事の全部または一部を受注者の指定する業者に施工させることができるものとし、発注者はこれを承諾した。」

文言は業者によって若干違うとはいえ、大抵が同等の趣旨になっているので、契約書にサインする前は、必ずチェックするべき内容です。
ちなみに、工事の一部を下請に出すことは、ごく普通に行われることですし、特に気にするような内容ではありません。

問題は、「工事の全部」と「発注者の承諾」を含めていることで、契約書を細部まで確認しない発注者の隙を突いて、このような約款にしています。
契約前に見つけたら、削除させるか契約の見直しも考えてみましょう。

前払いを要求するリフォーム業者は気を付けろ

請負契約は、仕事の完成の約束と仕事の結果に対する報酬の約束で成り立ちます。
つまり、リフォームが完成してから工事費を支払う後払いが、民法上の規定です。

しかしながら後払いは、例えば工事の材料費や設備費、人件費をすべて捻出し、その上で支払いがされないリスクを、施工業者に背負わせる酷な状況です。
対して前払いにすると、発注者は満足な工事がされないリスク、または工事がされないリスクまでも一方的に背負うことになり、この事態は避けなくてはなりません。

リフォームの支払方法は契約次第だが…

後払いでも前払いでも、どちらかのリスクが大きすぎることから、通常は当事者間で支払方法を合意し、着手時に半額、完了時に残金と分けるか、着手時、中間金、完了時の3回に分ける支払方法も良く使われます。

ところが、リフォーム業者の中には、前払いでなければ工事しないと言ってくる業者も存在し、特に異業種からの参入組では良くあるようです。
前払いが絶対に悪いとは言いませんが、契約行為はお互いの信頼で成り立つもので、リスクを一方に押しつけ、相手を信頼しない契約をする業者は考えものでしょう。

なお、物を買うのは前払いだから、リフォームの前払いを普通とする意見もあります。
しかし、完成品を目にして行う売買と、未完のリフォームを同等に扱えるはずもなく、前払いで逃げる詐欺もあることを踏まえると、リフォームの全額前払いは危険です。

前払いなら業界団体への所属や保険を確認

どうしても前払いにしか応じてもらえず、その業者に依頼したいのであれば、せめて業界団体に所属している業者であるか確認してみてください。
何かあれば、所属団体がトラブル対応の受け皿になってくれるはずです。

また、リフォーム瑕疵保険に加入している業者であることも大切です。
保険があると、不具合が後から見つかっても保険で対応してもらえますし、施工の確認も第三者が現場検査してくれます。

まとめ

真剣にリフォームを考え、業者選定に頭を悩ませる消費者とは裏腹に、リフォーム業界は、いかに利益を出すか必死で、いつの時代も悪徳業者は絶えません。
今回は、リフォーム業者について、違った側面からアプローチしてみました。

日本の人口は減少を続け、空き家の増加、新築物件の減少など、リフォームに対する市場の期待感は大きく、次々と異業種から参入しています。
需要は決まっているのですから、競争は激しくなり、市場原理で価格の低下を招く、消費者にとって都合の良い展開になっているようにも思えます。

しかし、良く考えてみると、低価格でリフォームを実現するには、誰かが犠牲にならなければならず、現場の労働者に満足な給料が支払われない構造を生み出します。
結果は言うまでもなく、現場の犠牲は消費者に跳ね返るのであって、低価格を過剰に求める消費者にも責任の一端はあるのでしょう。

そのような情勢の中、リフォーム業者を価格だけで追い続けると、先人達が失敗してきたように、総じて良い結果は得られません。
何を信じるかは自由ですが、短絡的な選択で後悔だけはしたくないですね。