リフォーム市場は国が活性化を目標にしており、特に耐震、介護においては補助金などの支援を行っています。
活性化への取り組みとしては税金の優遇もありますが、今回は補助金関係の助成制度を取り上げます。
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要介護認定または要支援認定を受けている人が、現在居住している住宅においては、手すりの取り付けなど、必要なリフォームをするときに限り、介護保険から住宅改修費の補助金を受けることができます。
この補助金は介護保険制度なので、自己負担が1割または2割発生します。
したがって、補助金の限度額は20万円に固定されていますが、支給額の上限は、自己負担1割を引くと18万円(自己負担2割なら16万円)です。
対象になるリフォーム
要介護者・要支援者が暮らしやすくするために行われる、以下のリフォームが対象です。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 床材変更
- 扉交換
- 便器交換
- 上記に付帯するその他の工事
手すりの取り付け
移動の補助や、転倒を防止するための手すりとして、玄関、廊下、階段、浴室、トイレなど複数箇所への取り付けが考えられます。
手すりの形状に規定はなく、要介護者・要支援者の補助となることが前提です。
付帯工事があるとすれば、手すりを取り付けるために、壁の補強をする場合などです。
段差の解消
いわゆるバリアフリーなので、住宅のあらゆる箇所が対象になります。
段差にスロープを設置する、床そのものをかさ上げして段差をなくす、敷居を取り除くなどが考えられ、玄関から道路までの屋外においても補助金の対象になります。
例えば浴室の段差解消による、新たな排水口の設置は付帯工事に該当します。
床材変更
主に考えられるのは、浴室等の滑り防止ですが、移動のための床材変更もあります。
例えば、畳の部屋は柔らかいので、車椅子には非常に使いづらく、移動に苦労することから、フローリングや樹脂系の床材に変更などです。
床材の変更では、床下地の補強等が付帯工事になるでしょう。
扉交換
開き戸を引き戸、折り戸等に変更すると、車椅子でも自分で移動ができるようになります。
また、既に引き戸等であっても、ドアノブを工夫して使いやすくしたり、戸車を変更して開閉を軽くしたりする改修も含まれます。
付帯工事で考えられるとしたら、例えば間口を広くするために壁を切り取るなどです。
便器交換
基本的には、和式から洋式への変更が該当するのですが、洋式でも要介護者・要支援者が使いにくく、改善するため必要なら認められます(要件が厳しくなります)。
ただし、水洗化については、介護リフォーム補助金の対象とは認められません。
付帯工事として、サイズや位置の変更による給排水工事などが想定されます。
介護リフォーム補助金申請の流れ
以下の順で進み、工事前の承認申請と工事後の支給が原則です。
↓
工事前承認申請
↓
承認通知
↓
工事着手
↓
工事後支給申請
↓
補助金支給
支給方法として、工事費を全額自己負担して、後から支給を受ける償還払い方式と、1割または2割を自己負担して、残りは自治体が支払う受領委任払い方式があります。
ここでは、償還払い方式を説明しますが、受領委任払い方式であっても、支給方法以外では、施工業者と事前合意が必要な点と、申請書が異なる点を除き大きく変わりません。
詳しくは、各自治体のホームページ等で確認してみてください。
事前相談
ケアマネージャーに介護リフォームを相談しますが、多くの自治体で必須です。
その理由は、申請書類の「住宅改修が必要な理由書」をケアマネージャーが作成することで、客観的に介護リフォームの必要性を判断できるようにするためです。
工事前承認申請
申請書に加え、工事見積書、改修前の写真、住宅改修が必要な理由書(ケアマネージャーが作成)、介護保険被保険者証等の写しなどを提出します。
申請をしても、承認通知が自治体から届かなければ、工事に着手してはいけません。
承認通知~工事着手
自治体で申請書と添付書類の審査をして、承認されれば申請者に承認の通知が届きます。
承認通知が届くまでの期間は、自治体によって異なりますが、概ね2週間程度です。
承認通知によって、介護リフォームの工事に着手できます。
工事後支給申請~補助金支給
工事が完了したら、自治体に完了報告と補助金の支給申請をします。
必要書類としては、承認通知、自己負担した領収書、工事内訳書、改修後の写真、介護保険被保険者証等の写しなどです。
補助金の支給は口座振込ができるので、口座情報も用意しておきましょう。
介護リフォーム補助金を受ける際の注意点
介護保険は市区町村で運用しているため、各自治体で運用が異なる場合もあります。
限度額の20万円は共通していますが、すべてが同じ基準ではないと思ってください。
その上で、注意点として次のような点が挙げられます。
- 要介護認定がないと補助金は受けられない
- 新築住宅に同じ施工をしても補助金は受けられない
- 介護保険被保険者証に記載の住所しか認められない
- 限度額の範囲内で複数回受給できる
- 転居するとリセットされる
- 要介護区分が3段階以上上がるとリセットされる
上記(特に受給のリセット)については、運用次第なので必ず自治体に確認しましょう。
家庭用燃料電池導入補助金
省エネ促進の政策から、エネファーム(家庭用燃料電池)の導入に対しては、普及促進を目指して国と自治体の補助金制度があります。
政府目標は、2020年までに140万台、2030年までに530万台の普及です。
国の補助金は、燃料電池普及促進協会(FCA)が窓口になっています。
年度ごとに制度は改定されているため、以降、平成29年度の補助金制度で説明します。
補助金のスケジュール
平成29年4月7日~平成30年2月23日で、申請書が郵送であること、燃料電池普及促進協会に必着であることを踏まえると、実際には数日前が事実上の期限です。
申請書の内容に不備がある可能性まで考え、1ヶ月程度は余裕が欲しいところです。
また、設置工事の完了は平成30年3月12日、完了報告も同日まで(ただし工事完了から30日との早い日)です。
この点からも、工事期間から逆算した締め切りを考慮しないと間に合いません。
補助金の対象
新品のエネファームを導入することが要件で、型番も決まっています。
エネファームには、固体高分子形燃料電池(PEFC)と固体酸化物形燃料電池(SOFC)という異なる燃料電池があり、補助金の上限額が異なるので注意しましょう。
補助金額
PEFCとSOFCでは導入費用が異なるため、補助金額も異なるのですが、全ての導入に対して補助を行うのではなく、基準価格と据切価格が定められています。
【基準価格と据切価格】
基準価格 | 据切価格 | |
---|---|---|
PEFC | 111万円 | 127万円 |
SOFC | 146万円 | 157万円 |
基準価格とは、補助対象とする導入費用の基準、据切価格とは導入費用の上限です。
補助を受けるためには、少なくとも据切価格以下ではなくてはなりません。
このような(導入費用に上限を設け、安いほうが補助金を受けられる)制度になっているのは、家庭用燃料電池を普及させるにあたり、提供事業者の価格低減努力を促すためです。
提供事業者は、価格を安くすることで補助金制度のメリットも訴えることができ、価格低減努力をした事業者ほどユーザーに購入してもらえる結果となれば、市場価格全体が下がる図式です。
【基本補助額】
基準価格以下 | 基準価格を超え据切価格以下 | 据切価格超え | |
---|---|---|---|
PEFC | 11万円 | 5万円 | 補助対象外 |
SOFC | 16万円 | 8万円 |
まず、基準価格以下と基準価格~据切価格以下では補助金額が異なることに注意してください。
基準価格以下なら満額、基準価格を超えると据切価格以下でも補助金は約半額です。
また、基準価格ならびに据切価格は、家庭用燃料電池の機能や燃料種別等によって上下します。
この要件があるために、実質的な基準価格・据切価格は上下するのですが、基準価格・据切価格が上下しても補助金額に変更はありません。
【基準価格・据切価格の上下】
寒冷地仕様 | +30万円 |
---|---|
自立運転機能内蔵 | +6万円 |
自立運転機能外付け | +4万円 |
マンションに設置 | +12万円 |
LPガス対応 | +12万円 |
中小都市ガス事業者 | +10万円 |
国産天然ガス対応 | +6万円 |
既にバックアップ給湯器あり(PEFC) | -27万円 |
既にバックアップ給湯器あり(SOFC) | -30万円 |
導入する家庭用燃料電池が、上表に適合している場合は(複数の場合あり)、基準価格・据切価格を再計算した上で、補助を受けられるかどうか判断しましょう。
補助金手続きの流れ
一般的な補助金の申請と大きく流れは変わらず、事前申請、補助金交付決定、工事着手、完了報告、補助金交付となります。
申請書類は様式が決まっており、FCAのサイトからダウンロードできます。
他に必要なのは、印鑑証明書とカラーの建物写真(新築なら不要)です。
FCAでの審査を経て、補助金交付決定通知がされるのを待ち、通知後に着工して工事完了後にFCAへ完了報告します。
完了報告は書類が多いので、ここでの説明よりもFCAのサイトで確認するほうが確実です。
家庭用燃料電池導入補助金の注意点
前述の通り、エネファームは新品で型番も指定されている点には注意が必要で、それ以外の注意点として、代金支払いによる、製品の所有権が申請者にあることです。
所有権が申請者にあるとは、代金がすべて支払われていることを意味します。
例えば、クレジットカードで支払うと、クレジットカード会社に完済するまで、所有権が申請者に移りません(所有権留保といいます)。
したがって、基本的に現金払いになってしまうのですが、所有権留保がない専用のクレジットで補助金申請に対応している会社もあります。
自治体に補助金制度がある場合も
国の補助金とは別枠で、都道府県や市区町村が補助金・助成金を出している取り組みがあり、重複して受けられる可能性が高いです。
ただし、国の補助金と重複受給が可能であるかは、自治体次第となります。
補助金額は5万円~20万円程度の範囲内が多く、独自審査をしている自治体、手続きを課便化するために国の補助金交付案件だけを補助する自治体など様々です。
いずれにしても、補助金は受けられるだけ受けたほうが良く、エネファームの普及が進むと廃止される制度なので、必ず自治体に確認してみましょう。
自治体ごとの補助金
都道府県や市区町村では、リフォーム等に対する補助金制度が多数あり、特定目的の制度や1つの制度が複数目的を網羅しているなど、独自の施策で一定ではありません。
少なくとも、リフォーム対象の住宅がある地域の補助金は知っておくとよいでしょう。
自治体の補助金制度は無数にあるため、ここでは主要都市(東京都は区)で行われている補助金制度を、目的別に分類して紹介します。
※一例であり、同様の制度が他の市区町村でもあるはずです。
介護・バリアフリーリフォームの補助金の例
都市 | 補助金上限額 | 備考(制度名等) |
---|---|---|
札幌市 | 50万円 | 住宅エコリフォーム補助制度 ※浴室、納戸等収納以外 |
東京都足立区 | 3万円/箇所 | 住まいの改良助成 ※介護保険制度との併用不可 |
大阪市 | 30万円 | 高齢者住宅改修費給付事業 ※要介護認定、介護保険制度対象外の工事 ※市民税課税世帯は対象外 |
介護・バリアフリーリフォームでは、介護保険制度での給付を受けられる都合上、介護保険制度の適用外を、補完する目的の補助金制度が多い傾向があります。
エコ・省エネリフォームの補助金の例
都市 | 補助金上限額 | 備考(制度名等) |
---|---|---|
東京都品川区 | 20万円 | 住宅改善工事助成事業 ※エコ・省エネ以外にバリアフリー・耐震 |
横浜市 | 40万円 | 住まいのエコリノベーション推進事業補助制度※概ね10%以上の省エネ効果が要件 |
京都市 | 工事箇所次第 | 既存住宅省エネリフォーム支援事業 ※補助金交付が終了している箇所もある |
上記で取り上げているのは断熱等ですが、省エネリフォームには、太陽光発電や家庭用燃料電池といった、別電源の設置にも多くの自治体が補助金を出しています。
耐震リフォーム・防災対策の補助金の例
都市 | 補助金上限額 | 備考(制度名等) |
---|---|---|
仙台市 | 60万円 | 戸建木造住宅耐震改修工事 ※2階建て以下 |
東京都江東区 | 150万円 | 木造住宅耐震診断・耐震補強助成事業 ※耐震診断にも補助あり |
大阪市 | 100万円 | 耐震診断・改修補助事業 ※自己負担が増えると加算の仕組みあり |
耐震リフォームでは、診断、施工の2つ、または設計を含めた3つに分けて補助金を交付する自治体が多く、それぞれで補助金を受けるのがお得です。
ただし、自治体によっては、それぞれの補助金が別枠になっているとは限りません。
景観に関する補助金の例
都市 | 補助金上限額 | 備考(制度名等) |
---|---|---|
石川県小松市 | 120万円 | 景観まちづくり事業 |
福井県大野市 | 400万円 | 都市景観形成建築物等整備事業 |
岐阜県高山市 | 200万円 | 市街地景観保存建造物修景事業 |
京都府宇治市 | 300万円 | 景観形成助成制度 |
大分県臼杵市 | 300万円 | 景観保全形成事業 |
景観に関する補助金では、歴史的・伝統的な価値がある景観を損なわないために、外観等のリフォームについて補助・助成をしています。
全国的なものではなく、景観重視なので保存目的や観光目的になるでしょう。
住宅・空き家リフォームに関する補助金の例
都市 | 補助金上限額 | 備考(制度名等) |
---|---|---|
新潟県長岡市 | 10万円 | 住宅リフォーム支援事業 |
石川県珠洲市 | 50万円 | 空き家改修費補助金 |
福井県福井市 | 30万円 | 空き家リフォーム支援事業 |
岐阜県恵那市 | 100万円 | 空き家改修補助金制度 |
岡山県岡山市 | 50万円 | 空き家適正管理促進モデル事業 |
国策として空き家対策が進められているので、自治体レベルでも空き家リフォームに対して補助金が用意されています。
都市部でも地方でも関係なく、空き家対策は緊急課題なので、どの地域も積極的です。
各都道府県の補助金の調べ方
全国各地の補助金を調べる方法としては、住宅リフォーム推進協議会が提供している、検索を使うと便利です。
このサイトは、耐震、バリアフリー、省エネルギー、環境、防災、その他の分類で検索できる非常に便利なサイトですが、網羅されていない補助金が数多くあります。
むしろ、上記サイトに未掲載の補助金のほうが多いとも考えられるため、検索できなくても補助金がないと諦めるのは早計で、自力で検索して探してみましょう。
まとめ
補助金をできるだけ多く受けるには、補助金制度の情報収集が欠かせません。
リフォームはあまり細かく行うと、時間的にも経済的にも非効率になるため、ある程度はまとめて工事することになります。
したがって、適用される補助金も複数になると想定され、どの工事はどの補助金が受けられるのか、重複して受けるためにはどうすれば良いのか考えることが大切です。
国、都道府県、市区町村それぞれの補助金制度を調べ、重複して補助金を受けられるように、補助金の組み合わせを考えてみましょう。
また、原則的に補助金には予算枠があり、毎年度予算確保される補助金ならともかく、設備等の普及によって廃止されては手遅れです。
だからといって、急ぐあまりリフォーム計画がずさんにならないようにしたいものです。