「地震はいつ起こるか分からない」というのは聞きなれたセリフですが、相続で手にしたような古い家の場合は、他人事にしたくないところです。
耐震リフォームのポイントは、まずその必要性を知ることから始まります。
日本は地震が多い国ですから、国もそれに耐えうる町づくりの重要性を認識しており、都道府県ごとに支援制度があるので、耐震補強の内容と合わせてみていきましょう。
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1981年以降の新耐震基準を満たしていれば、大丈夫だと思っていたら大間違いです。
家はどんどん劣化していくので、古い家が新築時の耐震性を保っていることなど到底なく、現在の耐震性を把握することがとても大切です。
ここでは、耐震リフォームの対象を基礎、壁、柱・梁・土台、屋根とし、地盤改良を含めず、軸組み工法(在来工法)の木材住宅を前提としています。
1.まずは耐震診断を受ける
そもそも現在どのくらいの耐震性があるかは、耐震診断ができる専門家に調査・診断してもらわなくてはなりません。
耐震診断の結果、上部構造評点という評価点で耐震性能が判定されます。
上部構造評点 | 耐震性能 |
---|---|
1.5以上 | 倒壊しない |
1.0~1.5未満 | 一応倒壊しない |
0.7~1.0未満 | 倒壊する可能性がある |
0.7未満 | 倒壊する可能性が高い |
評点1.0が現行法令の基準耐震強度で、目標としては1.5以上を目指します。
しかし、予算や工期の都合があるなら、1.0以上になる改修工事でも大丈夫です。
上部構造評点は最低値が利用される
上部構造評点は、1階と2階のそれぞれ東西方向(X方向)、南北方向(Y方向)で算出されるため、2階建てなら4つの部分的な評点があります。
建物全体の評点は、部分的な評点の中で最低値を用いることになっています。
つまり、建物全体の評点が1.0以上なら、部分的な評点はすべて1.0以上なので、緊急に耐震リフォームは必要なく、建物全体の評点が1.0未満なら、部分的な評点が1.5以上でも、耐震リフォームを必要とする理解で問題ありません。
その判断をするために耐震診断を頼むのですが、行政が無料または数千円、もしくは補助金によって耐震診断を促進しているので、自治体に確認してみましょう。
2.基礎部分
現在の住宅では、基礎部分に鉄筋コンクリートを入れて強度補強をしています。
古い家になると、無筋コンクリートを使っているケースがあるので、その場合は耐震リフォームの対象になります。
補強方法は、鉄筋コンクリートを無筋コンクリートに一体化させる方法が使われます。
また、ひび(クラック)があるときは、クラック用の補修材を注入して対処します。
3.壁の補強
横方向からの力を受け止めるためには、内外の壁の補強が欠かせません。
縦方向の柱と、上下の梁・土台で作られる四角に対し、斜めに補強材を入れる筋交いや、四角い板を打ち付ける構造用合板で補強します。
また、開口部(窓など)がある壁ほど弱くなるので、まったく使っておらず不要な窓等があれば、塞ぐことでも強度はアップします。
外壁側から補強するときは、外壁のリフォームで張り替えするときに、一緒に補強工事も行ってもらうと効率良くできます。
4.柱・梁・土台
震災による倒壊被害の原因の1つに、建物がゆがむことで、斜めになった柱が土台や梁から抜けてしまう現象があります。
耐震リフォームでは、金物を使って柱と土台や梁の接合部を補強します。
また、古い家では湿気や白アリ被害で木が腐っている場合もあり、特に湿気が集まりやすい土台や柱の下部に多くみられます。
そのような場合は、腐っている部分を取り去り継ぎ足します(根継ぎといいます)。
土台と基礎を固定させるために、新たにアンカーボルトを打ち込むこともあります。
5.屋根による耐震
基本的な考え方として、屋根が重いと家の重心は高くなり、揺れに対して不利に作用するのは確かでしょう。
しかし、典型的な重い屋根の瓦屋根が、地震に弱いというのは誤解があるようです。
重い屋根を持つ家は、その重さに耐えうる構造で建てられているはずで、むしろ主要構造が揺れに耐えられずに倒壊したと考えることもできます。
耐震基準が古い住宅に瓦屋根が多かったのも、震災で倒壊を増やした原因です。
何のために耐震基準があるか考えれば、同じ耐震基準で建てられた住宅に、屋根材の違いで耐震性能の違いがあってはおかしい話です。
したがって、屋根が軽いと負荷が軽くなるのは確かでも、屋根に応じた耐震基準を満たすことを考えてリフォームしなければなりません。
6.耐震リフォームと補助金
地震による住宅の倒壊で、被害が拡大することを防止する目的から、各自治体は耐震診断や耐震改修工事に補助金制度を設けています。
対象になるのは、上部構造評点が1.0未満の住宅を、1.0以上にする改修工事です。
補助金制度を利用する際は、耐震診断や耐震改修工事の前に申請して、補助金の交付決定を受けてから、実際の診断や工事して完了報告を提出します。
事後申請は、どこの自治体でも認めていないので注意しましょう。
補助金額は自治体の予算次第なので、ホームページ等で確認するしかありません。
また、自治体によっては、施工業者に登録制を採用しており、自治体登録の施工業者しか利用できなくなっていることもあります。
これは、嘘の耐震診断や水増しした改修工事をして、自治体の補助金制度を不正利用されないようにするためです。
まとめ
耐震性能が十分であるかどうかを素人が判断することは難しいので、改修設計においても、選ぶ余地はほとんどないというのが実際のところです。
万が一の時に住む者や、併発する火事などによって地域の人が危険にさらされることを認識し、その必要性を考えることこそが持ち主にできることであり、耐震リフォームのポイントと言えるでしょう。