工業専用地域の特徴と土地活用の考え方

現在、日本の土地には建てて良い建物が制限されている土地があります。

そのような土地の一つが、工業専用地域です。

土地にかけられている制限を知っておかないと、土地を購入してから想定していた建物が建てられないといったトラブルが生じることがあります。

工業専用地域はどのような目的で設定され、どのような建物を建てて良いのでしょうか

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用途地域とは何か

工業専用地域

都市を整えるための制度

工業エリアと住宅エリアが混在してしまったりすると、生活環境が悪くなってしまったり業務の利便性が失われてしまいます。
そこで、エリアを分けて都市を整備することで、住環境を守り住みやすく便利にする制度が作られました。
これが、用途地域です。

用途地域は日本全国すべての土地の用途を指定しているわけではありません。
主に人が多く密集して住んでいるエリアに当てられることが多く、乱開発が行われないように調整されているのです。

用途地域は全部で13種類に分けられていて、大きく分類すると住居系商業系工業系の3つになります。

用途地域が定められている土地では住宅や店舗など建物の使い方が決められています
さらに、高さや容積率なども定められており、区域内の秩序を乱さないようにルールが作られています。

用途地域の種類

用途地域には工業専用地域の他にどのような区域があるのでしょうか。

区域によっては、住宅の建設を不可とするような場所もあります。

目的区域概要
住居環境を最優先第一種低層住居専用地域低層住宅のための地域。小規模な店舗やオフィスを兼ねる住宅などが他建築できる。
第二種低層住居専用地域主に低層住宅のための地域。150㎡までの一定お店が建築可能。コンビニなども出店できる。
第一種中高層住居専用地域中高層住宅のための地域。大学などが設置できるが、住宅専用地域のためオフィスビルなどは建築できない。
第二種中高層住居専用地域主に中高層の住宅のための地域。2階以下で1500㎡までのお店や事務所、大学などを建築できる。
住居環境の保護第一種住居地域住居の環境を保護するための地域。大規模なマンションなどが建築できる。パチンコ店やカラオケボックスなどの建築は禁止。
第二種住居地域主に住環境を保護する地域。大規模店舗、カラオケボックスなども建築できる。
道路沿いで自動車関連施設と住居の調和準住居地域住宅系の用途地域で最も許容範囲が広い地域。200㎡より小さければ、映画館や営業用倉庫なども認められている。
農地と住居の調和田園住居地域低層住宅と農地の混在で良好な住環境を保つ。平成30年4月から導入予定の新しい区域。
映画館や倉庫、車庫が立てられる近隣商業地域近隣の住宅の住民に日用品などの販売を主とする商業地域。飲食店、展示場など建設可能。
商業地域商業の利便性を進めるための地域。一定の工場などを除いてほとんどの用途の建築物をたてられる。
準工業地域住宅と工場が混ざる地域。火災の危険や健康への有害度が高い工場は建設禁止。
工業地域環境悪化の恐れがある工場も建築可能なエリア。住宅・店舗の建設は可能だが、学校や病院は不可。
住居は建てられず、工場のみ工業専用地域石油類やガスなど危険物の貯蔵・処理の量が多くても可能。住宅や店舗は建築不可。

地価が高くなる用途地域とは

最も需要が高いのは、制限が少なく家でもお店でも建設することができる商業地です。

逆に用途への制限が厳しい第一種低層住居専用地域は一般的に土地価格が安くなります。

工業専用地域は、主に工場しか建てられず、居住用の住宅は建設することができないので、需要が少なく、価格は安くなります

用途地域の調べ方

売却や購入する不動産は契約前に用途地域を調べておいた方が良いでしょう。

売却の場合はどんな人に販売できるのか、土地活用はできるのか考えるための参考になるからです。

購入する際は、事前にどれくらいの高さの家が建てられるのか知ることができますし、周辺に今後どんな建物が建つのかある程度推測できます

お子さんなどがいる人は特に環境が気になるのではないでしょうか。

最も簡単な調べ方は不動産屋さんに「ここの用途地域を教えてください」と聞くことです。

それが難しいという方は不動産が所在する市役所に連絡し、「用途区域を教えてください」と連絡を入れましょう。

仕事が忙しい方の場合は、Web上で調べる方法もあります。

「市町村 都市計画図」で検索すると、各地域の区域がわかります。

詳しい使い方はこちらの記事で千葉県柏市を例に解説しています。

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用途地域

その他の方法として、家を購入されている方は契約前に不動産会社からもらった「重要事項説明書」の用途地域の枠を確認するというやり方もあります。

用途地域が重なってしまった場合

用途地域の境目の不動産を購入してしまった、用途地域の区域分けが変わって2つの区域にまたがってしまうこともあるかと思います。

そんな時は過半主義が適用されます。

過半主義とは2つの用途地域をまたいでしまった場合、より多くかぶっている方の区域とみなすというものです。

この時、過半は土地で見るので、上に建っている建物のかぶってる比率は関係ありません。

しかし、いくつか例外になる要件があります。

例外になるのはこちら

制限決定方法
建ぺい率加算平均で計算する
容積率加算平均で計算する
高さ制限建物がかかってる区域の高さ制限をそれぞれ適応しなくてはいけない
防火・準防火地域厳しい方の制限が適用

※加算平均とは一般的な平均の計算方法と同じです。

ややこしい計算をしなくてはならないので、不動産会社か役所に問い合わせて建てられる建物の条件を聞くと良いでしょう。

工業専用地域とは何か。工業地域との違いは?

工業専用地域
工業専用地域は、工場のための地域です。どんな種類の工場も建てることができますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てることができません。

工業専用地域は工業都市でもなければあまり見られない用途地域です。
臨海部に広がる重化学コンビナートや倉庫群のように、住宅地としては適さない地域で、そもそも工業専用地域には住宅を建てることができません。

また、物品販売店舗や飲食店も原則として建てられず、工業専用地域は生活に全く向かない地域だと思えば良いでしょう。
工業地域と同じく、基本的に住居専用地域とは隣接しないように指定されます。

その一方で、工業専用地域で働く労働者にとっては、用途制限が厳しすぎて不便極まりないため、労働者向けのコンビニや食堂など原則禁止の用途でも、特定行政庁の許可を得て設置されているケースがあります。

工業地域との違いは、工業専用地域では工業地域で認められていた戸建て・マンションや店舗兼住宅・事務所兼住宅、図書館、老人ホーム、店舗や飲食店を建てることができない点が挙げられます。

このように工場専用地域で規制が大きくなるのは、工業専用地域が工場のための地域で、住むことが想定されていないからです。

工業専用地域をより詳しく知るために、次に工業専用地域で受ける制限について詳しく見ていきましょう。

工業専用地域で受ける制限

工業専用地域
工業専用地域には以下のような制限があります。

・建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)
30%、40%、50%、60%のうち都市計画で定める値
・容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)
100%、150%、200%、300%、400%のうち都市計画で定める値
・道路斜線制限(前面道路から一定距離までの高さ制限)
適用距離:前面道路の反対側の境界から20m、25m、30m、35m(容積率による)
高さ制限:前面道路の反対側の境界からの距離×1.5
・隣地斜線制限(隣地境界から一定高さ以上の高さ制限)
隣地境界からの距離×2.5+31m(特定行政庁指定区域は制限なし)

工業専用地域で建てられる建物・建てられない建物

工業専用地域
工業専用地域ではすべての工場が建設可能ですが、その分住居や店舗など生活に必要なものを建てることができません。
【建てられる建物】

建物の用途その他の制限
店舗等で10,000㎡以下物品販売店舗、飲食店を除く
事務所等
カラオケボックス等10,000㎡以下
巡査派出所、一定規模以下の郵便局等
神社、寺院、教会等
公衆浴場、診療所、保育所等
老人福祉センター、児童厚生施設等
自動車教習所
単独車庫
建築物附属車庫
倉庫業倉庫
自家用倉庫
畜舎(15㎡超)
洋服店、畳屋、建具屋、自転車店等(作業場の床面積50㎡以下)原動機0.75kW以下
パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等(作業場の床面積50㎡以下)原動機0.75kW以下
工場全般
自動車修理工場
危険物を取り扱う施設全般

【建てられない建物】

  • 住宅
  • 物品販売店舗または飲食店、もしくは10,000㎡超の店舗等
  • ホテル、旅館
  • ボーリング場、スケート場、水泳場、ゴルフ練習場等
  • 10,000㎡超のカラオケボックス等
  • 麻雀屋、パチンコ屋、射的場、馬券・車券発売所等
  • 劇場、映画館、演芸場、観覧場、ナイトクラブ等
  • 風俗施設
  • 幼稚園、小学校、中学校、高等学校
  • 大学、高等専門学校、専修学校等
  • 図書館等
  • 病院
  • 老人ホーム、身体障害者福祉ホーム等

工業専用地域に関するよくある質問

工業専用地域
工業専用地域は、工場のための地域といっても、まったくお店が建てられなかったら、工場で働く労働者にとって不便です。

そこで、軽食を食べられるような施設は建てられないのか、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

工業専用地域にコンビニや飲食店は建てられるか?

工業専用地域では、物品販売などを目的とした店舗や飲食店を建設することは原則禁止されていますが、複数の工場の従業員向けのコンビニや社員食堂などは、建築基準法の許可制度を活用すれば建設可能です。

例外的にコンビニや食堂が認められているのは工場で働く労働者の利便性を考慮したためです。

同様の理由で、工業専用地域では児童厚生施設等も建設することができますから、働く労働者が子供を預けるための保育所を建設することができます。

工業地域での土地活用の考え方

工業専用地域
工業専用地域は、工業団地のように計画的な整備に基づいて指定されるため、個人で土地を所有しているとは考えにくく、所有しているとすれば法人でしょう。
その理由も、操業停止など工場跡地としての所有だと思われます。

工業専用地域の特性上、最も可能性があるのは事業用地として他社への売却となりますが、地域内に複数企業が立地している場合は、労働者が共同で利用する何らかの施設を、合同出資で建てる話し合いができるかもしれません。

また、工業専用地域において、工場跡地の有効活用が図られていないことは従来から問題視されており、これは自治体にとっても大きな悩みのタネです。
そこで、活用の可能性を広げるため、自治体に相談してはどうでしょうか

用途地域が変更されるだけで建物の用途は格段に増えますし、もしかしたら再開発計画に繋がって買収される可能性もあります(交通等の立地条件によります)。
いずれにせよ、何も動かないと何も進まないということです。

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