太陽光発電を普及させるきっかけになったのが、買電価格よりも高い売電価格(買取価格)を、一定期間可能にした「固定価格買取制度」です。
差額は、太陽光発電を導入していない人も含めた、利用者全体で負担しています。
売電価格は導入時の価格が維持されるため、制度開始当時は魅力的に思えたでしょう。
しかし、売電価格の高さは、太陽光発電の普及を目指した政策的な意図もあり、普及が進むにつれて下がってきています。
これまでの売電価格推移と、これからの予想について取り上げました。
あくまでも予想でしかないため、一意見ではありますが、これから太陽光発電を始めるなら今後の動向を掴んでおきましょう。
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2009年に売電が制度化されるまでは、各電力会社が自主的に余剰電力を買い取っており、買取価格は各社の契約料金単価相当でした。
したがって、電力会社で買取価格は異なりますが、住宅用なら20数円/kWh程度、事業用なら10数円/kWh程度で売電されていた経緯があります。
しかし、設備が非常に高価で、わずかな余剰電力を買電価格と同等の価格で売っても、導入費用の回収まで長期間必要でした。
必然的に導入メリットが小さく、普及が進まなかった時代です。
固定価格買取制度導入後の売電価格
太陽光発電の買取制度は、2009年11月に「余剰電力買取制度」という住宅用・事業用の余剰買取からスタートし、住宅用は48円/kWh、事業用は24円/kWhに設定されて、それまで行われていた電力会社の自主買取価格に比べ約2倍となりました。
しかし、発電事業を目的とする産業用は買取対象外とされ、後に2012年7月からは、産業用の全量買取も含めた現行制度に移行しています。
(本記事では余剰電力買取制度も固定価格買取制度として扱います)
住宅用(余剰買取・税込) | 産業用(全量買取・税別) | |||
---|---|---|---|---|
出力抑制あり | 出力抑制なし | 10kW以上2,000kW未満 | 2,000kW以上 | |
2009年以前 | 20数円|10数円/kWh | ~2012年6月は全量買取の制度なし | ||
2009年度 | 48円/kWh|24円/kWh | |||
2010年度 | 48円/kWh|24円/kWh | |||
2011年度 | 42円/kWh|40円/kWh | |||
2012年度 | 42円/kWh | 40円/kWh | ||
2013年度 | 38円/kWh | 36円/kWh | ||
2014年度 | 37円/kWh | 32円/kWh | ||
2015年度 ~6/30 | 35円/kWh | 33円/kWh | 29円/kWh | |
2015年度 7/1~ | 27円/kWh | |||
2016年度 | 33円/kWh | 31円/kWh | 24円/kWh | |
2017年度 | 30円/kWh | 28円/kWh | 21円/kWh | 入札制度で決定 |
2018年度 | 28円/kWh | 26円/kWh | 18円/kWh | 入札制度で決定 |
2019年度 | 26円/kWh | 24円/kWh | 未決定 | 入札制度で決定 |
※住宅用は10kW未満でダブル発電を除く
最新の売電価格情報は固定価格買取制度|資源エネルギー庁で確認できます。
売電価格と導入費用は連動している
太陽光発電の普及のためには、高い買取価格が必須で、さらに補助金を投入するほど導入費用は高く、制度開始当初から回収には10年程度という試算でした。
試算した水準は、太陽光発電パネル等の導入費用が下落し、買取価格も下がった現在においては、当初よりも考慮されていないのが実状です。
というのも、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーが促進された経緯は、クリーンな自立電源の普及が目的だったのですから、ある程度普及した現在では、売電よりも自家消費にインセンティブを与えるのが、制度の本来あるべき姿だからです。
それでも、買取価格の検討を行う調達価格等算定委員会は、余剰電力買取制度が始まった2009年から、10年経過する2019年を新たな目標に据え、導入費用の低下や機器の性能向上を踏まえながら、徐々に買取価格を下げていきました。
2019年度の買取価格は、出力制御ありで26円/kWh、出力制限なしで24円/kWhと、大手電力会社での家庭用電力料金と同等水準に達するので、住宅用太陽光発電は1つの節目を迎えると言ってもよいでしょう。
一方、2,000kW以上の産業用太陽光発電には、2017年度から入札制度が設けられ、これまでとは違った対応が求められます。
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売電価格と導入費用がわかると、自分の土地で太陽光発電を始めるイメージが明確になるでしょう。見積をしてくれる企業は数々の太陽光発電の導入をサポートしてきたプロなので現在の売電価格だけでなく将来の売電価格の予想も教えてくれます。
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産業用太陽光発電の入札制度とは
これまでは、太陽光発電の導入・運用コストをベースに買取価格が算定されてきましたが、電気料金には賦課金が上乗せされる形で、電気の利用者負担となっていました。
利用者負担を軽減するために設けられたのが入札制度です。
入札制度では、1kWh当たり上限買取価格と入札募集容量が定められ、発電事業者は供給可能な1kWh当たり買取希望価格と出力量を提示して入札に参加します。
そして、安価な買取希望価格を提示した事業者から、入札募集容量に達するまで(なおかつ上限買取価格を超えない範囲で)落札されます。
ポイントは、落札された発電事業者にしか、認定の権利が与えられないことです。
入札制度ができたことで、発電事業者はこれまでよりも発電コストを重視しなくてはならず、発電コストが高い(買取希望価格が高い)発電事業者は排除されます。
これまでの売電価格の推移と売電価格の決まり方などを解説しました。
現在太陽光発電の導入を検討している人が気になるのは今後の売電価格でしょう。現在、2019年以降の売電価格は発表されていませんが、予想されている価格はあります。
参考に2019年以降の価格を見ていきましょう。
2.売電価格のこれからの予想
買取価格が下落してきた経緯は、導入費用が下がったことに間違いないですが、最近は30万円台/kWから下げ止まりの傾向が見られます。
しかしながら、買取価格は下げ止まらず、現在の価格目標は次のとおりです。
- 2019年で家庭用電気料金並み(24円/kWhを想定)
- 2020年以降できるだけ早期に電力市場価格並み(11円/kWhを想定)
もちろん、上記の価格目標には導入費用が下がっていくことも前提に入っています。
ただ、これまでと異なり、太陽光発電は普及が進んでいるので、早期回収を期待できないことは頭に入れておきましょう。
2019年以降の価格を予想
2019年までの売電価格は決定していますが、2020年度の価格は経済産業省より、2020年度の取扱は決定しないと発表されています。
発表しないとは、2019年5月現在の話になり、今後発表される可能性は大いにあります。前回2017~2019年の売電価格は2016年に3年分まとめて発表という背景もあるので、その日が来るまで待つしかないでしょう。
しかし、2024年の売電価格は10.3円/kWh程度が目標とされており、現在2019年の出力制御なし24円/KWhから均等に落としていくと考えると、毎年約2.7円、四捨五入して毎年3円/KWhずつ減っていくと予想できます。
導入費用にも目標は設定されている
日本の太陽光発電システムは、欧州に比べて約2倍と言われており、まだまだ下がる余地はあると考えられています。
買取価格に目標があるように、導入費用にも一応の目標設定はあります。
- 2019年で30万円/kW
- 2020年以降できるだけ早期に20万円/kW
上記は住宅用の目標で、規模が大きくコスト削減が可能な産業用は、2020年に20万円/kW、2030年に10万円/kWとされていますが、実現性については不透明です。
ただし、海外の太陽光発電市場では、導入コスト・買取価格ともに日本よりもはるかに低水準であることを踏まえると、日本でも一層の低価格化は進んでいくでしょう。
タイナビNEXTを使うとさらに導入費用が下がります。
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住宅用なら10年、非住宅用なら20年電気の買取と価格は保証されていますが、買取期間の終了後、発電した電気は一銭にもならないのでしょうか。
次ではFIT制度終了後の電気の使い方について知っておきたい方法を解説します。
3.FIT制度終了後の電気の使い道とは
FIT制度に守れた固定買取期間(10年または20年)を過ぎると、電力会社は国から指定された価格で電気を必ず買い取らなくていけないという義務がなくなります。
固定買取期間の価格は国によって高く設定されているので、期間終了後も同じ価格で買い取ってくれることは期待できません。
発電施設を持つ電力会社にとって、契約料金単価相当では、自社の発電原価よりも高コストですから買い取る意味がなく、発電原価が1つの指標です。
原発再稼働で発電原価は今よりも下がり、買取価格も下がります。
では、固定買取期間が終了した後、太陽光発電の電気はどうすれば良いのでしょうか。実は、固定買取期間が設定されたのは2009年、余剰買取の固定買取期間10年が終わるのがちょうど今年、2019年なのです。
自由買取で電気を売る
買取の義務はなくなるので地域によって異なりますが、余剰買取に関して一部大手電力会社は固定買取期間が過ぎても買い取ってくれるプランを発表しています。
平均的な売電価格はおおよそ8円/kwです。電力会社によっては電気を蓄電するなどただ電気を買い取る以外のプランも選択肢として提示しているので、自分が電気を売ることになる電力会社を調べてみましょう。
以下の記事に買取を表明している電力会社の一部を紹介しています。
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土地活用で太陽光発電をし、全量買取を行っている場合は固定買取期間が20年のため、まだ買取期間が終了する人は出ておらず、どうなるのか不明な状態です。
これから始める人は現段階では10年後、初めての買取期間終了を参考にするしかなさそうです。
自宅で使用する
余剰電力を売電している人はすでに自宅で使用していますが、全量買取の場合は自宅で使用する自己託送という方法もあります。
家の隣りで太陽光発電を行っている場合は自身で家に電気を取り入れるという方法もありますが、離れた土地で太陽光発電をしている場合は、送電するのに送電網を使用しなくてはなりません。送電する場合は利用契約をし、利用料を支払うようになるでしょう。
4.売電価格が下がる今、太陽光発電発電するメリットとは
売電価格の推移や固定買取期間が過ぎた後は分かりましたが、太陽光発電をするメリットはあるのか?と気になるところでしょう。メリットはいくつかありますが大きなものでは以下になります。
電気代が安くなる
住宅に太陽光発電を導入すれば、太陽光発電で作った電気は家庭内で使用できるので、電気代はかなり下がるでしょう。HIクッキングヒーターや電気自動車を使用している人であれば、その効果はより感じられると思います。
ただし、太陽が出ておらず発電ができない夜間などは電気会社から電気を買うことになるため、蓄電池などを導入しなければ月々の支払いを0円にするのはなかなか難しいでしょう。
設置費用が年々安くなっている
太陽光発電を導入するのに必要な設備費用が年々下がっています。平成23年に新築住宅で46.8万円、既築住宅で53.7万円だったものが、平成28年には新築住宅で35.4万円、既存住宅で37.6万円まで下がっています。
(資料:電源種別(太陽光・風力)のコスト動向等について|資源エネルギー庁)
前年比でも約1.2/kw下がっており、年々一般家庭に普及しやすい価格に下がっています。
理由としては、現在シェア1位と2位を取っている中国産の低価格ソーラーパネルの誕生や設置工事の費用が下がってきていることが上げられています。FIT制度の買取価格も年々下がっていますが、売電より自宅での活用を重視する人には買取価格は問題なく、導入しやすいのはメリットでしょう。
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非常時に蓄電池として使える
自然災害などで電力会社からの電気の供給が止まってしまった場合、自立運転に切り替えることで、自宅で発電した電気を使って生活に必要な電気をまかなえます。
天候や使用する機械により異なりますが、テレビや冷蔵庫、スマホの充電など情報収集や生活をするのに必要な電子機器を使うことができます。
さらに、蓄電池も設置してあれば、太陽光で発電した電気を貯めておけるので、夜間に停電してしまった際でも安心です。
土地活用ができる
土地活用で有利になることが多い立地は人通りが多い都心部にある土地ですが、太陽光発電の場合は逆です。周辺に高い建物がなく、土地代が安いような所が良いとされています。
相続した土地が都市部から離れていて、活用しづらい売りづらいと考えていた人は太陽光発電の可能性を探ってみても良いと思います。
運用資金がほとんどない
全量買取の場合、太陽光発電を行うのにかかる費用のほとんどが始めに機材を揃える初期費用です。破損した場合などで修理代や撤去代が必要になることもありますが、基本的には初期費用を払い終わってしまえば、後は収益から費用代が引かれることはありません。
さらに、初期に自己資金が足りずローンを組みやすいというメリットもあります。賃貸経営などは競合がいて空室というリスクもありますが、太陽光発電には競う人がいません。
天候により発電量は変わりますが、収益は比較的安定しています。また、国が売電価格を定めているので、値崩れする心配もないので金融機関は返済の目途が立てやすく、融資をしやすいのです。
メンテナンスに労力が少ない
屋外に設置するので、土埃や鳥のフンなどを定期的に清掃する必要はありますが、毎日メンテナンスを行う必要はありません。
別の土地に設置する野立てタイプなら現地へ行くまでに時間がかかってしまうこともありますが、自宅で太陽光発電を行うなら目視して汚れている場合はメンテナンスを行う程度で問題ありません。
太陽光発電にはメリットがあればもちろんデメリットもあります。検討する際はデメリットも確認しておきましょう。
太陽光発電は、日照があれば場所を選ばず成り立つ発電方法なので、一般に考えられる建物の屋根への設置以外にも、空き地でも行うことができ、「野立て」と呼ばれます。住宅屋根より広い土地で行うことが多い野立ては発電量も多く、主に生活用ではなく収益を得[…]
5.太陽光発電を導入するなら今がお得
住宅用太陽光発電は、売るより使う時代に少しずつ近付いています。
今後、蓄電池が普及すると、ますます傾向は高まっていくと考えられますので、売電目的での導入は、難しくなっていくと考えるのが妥当な判断です。
これまでは、買取価格が電気料金を上回っていたため、できるだけ自家消費せずに売電を優先してきましたが、将来は買取価格が電気料金を下回ります。
すると、自家消費したほうが得をするので、導入費用の回収原資も、売電収入から電気代の節約へシフトするということです。
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