固定買取価格制度が始まって以降、日本における太陽光発電市場は、国内外のメーカーが入り乱れて、消費者としてはどのように判断すべきか迷うところです。
特に、肝心の太陽光発電パネルについては、数字だけでは語れない部分があります。
今回は、現在施工が可能だと思われる国内外の主要メーカーについて、その特徴をかんたんに紹介していますので、メーカー選びの参考にしてください。
なお、情報は2016年2月時点を基準としており、変更される可能性があります。
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日本人は特に品質を重視する国民性があると言われており、ものづくりにおいては日本がNo.1という自負もあってか、国内メーカーへの信頼度は非常に高くなっています。
しかしながら、国内メーカーが海外に生産拠点を持っているケースも少なくないことから、国内メーカー=国産は成り立たないことに注意しましょう。
ソーラーフロンティア
昭和シェル石油の100%子会社で、シェルソーラージャパン(2004年設立)、昭和シェルソーラー(2006年設立)、2010年から現在のソーラーフロンティアになっています。
最大の特徴は、化合物系と呼ばれるCIS太陽電池を採用していることです。
比較的安価なパネルでありながら、CIS太陽電池は高温特性がよく、数字上の変換効率では他のメーカーに劣っても、高温時の出力ロスが抑えられることで、実発電量は上乗せが見込めるとメーカーではアピールしています。
ただし、最大の変換効率は、単結晶シリコンやHIT(ハイブリット)に比べると劣るため、広い面積で運用する野立てか、住宅用ならコストパフォーマンス重視となりそうです。
20年保証(10年で10%以上の低下、20年で20%以上の低下)があり、保証期間の長さは十分でしょう。
パナソニック
太陽光発電分野において、パナソニックを選択する人の多くは、HITのパネルを検討しているはずで、HITは三洋から販売されていましたが、パナソニックに吸収されたことで、現在はパナソニックの製品になっています。
HITは単結晶シリコンとアモルファスシリコンの組み合わせにより、相互の弱点を補完して高い発電効率を実現し、国内でよく知られたブランドであること、最高水準の性能を持つパネルであることなどが重なり、HITの人気は高いです。
また、高性能の代償としてパネルが高価になってしまうため、設置面積が狭く、少しでも発電量を稼ぎたい住宅用が主なターゲットでしょう。
2015年の秋から受注が開始されたHITのモデル(P250α、P120α、245α、120α)は、25年保証(10年で81%未満、25年で72%未満)も付いています。
三菱電機
パネルとしては単結晶シリコンで、性能としてずば抜けてはいないものの、知名度と国内製へのこだわりが支持されるメーカーです。
しかし、三菱電機の長所は、パネルよりもむしろパワーコンディショナーにあります。
業界最高(単相、10kW未満)の98%という高い変換効率を実現しており、この数値は、システム全体で得られる発電量に大きく影響します。
いくら性能のよいパネルを使っても、パワーコンディショナーの質が悪いと、ロスが大きくなって発電量が下がるため、高性能なパワーコンディショナーは必須なのです。
また、PV-MA2300Lシリーズでは25年保証(20年まで80%未満、25年まで72%未満)、従来製品でも20年保証に加え、パワーコンディショナー等の付属機器には10年保証+有償の5年延長保証プランがあります。
シャープ
古くから太陽電池の開発に取り組んできたシャープは、宇宙分野での実績を生かして、住宅用・産業用の太陽光発電でも知名度は高いのですが、経営再建に課題を持ち、今後の見通しが不安視されているメーカーでもあります。
以前から、米サンパワー社のOEM販売も並行していましたが、BLACKSOLARシリーズの登場で、変換効率が19%を超えた製品が登場しており、単結晶シリコン分野でのシェア拡大が見込まれているところです。
BLACKSOLARシリーズには、プレミアム保証(住宅用限定)を適用可能で、パネルは20年保証(10年まで81%未満、15年まで76.5%未満、20年まで72%未満)の他に、一般的には10年の機器保証が15年に拡大されています。
京セラ
国内初の住宅用製品を手掛けた京セラは、以前より多結晶シリコンで太陽光発電のシェアを伸ばしていましたが、近年はエコノルーツ アドバンスシリーズのように、単結晶シリコンも扱うようになってきました。
結晶シリコン系がメインだった時代には、単結晶シリコンよりも価格が安いことで受け入れられていたのですが、市場全体でパネルの価格が下落してきたこと、海外メーカーに押される形で単結晶シリコン製品の開発に踏み切ったようです。
とはいえ、多結晶シリコンといえば京セラという知名度は変わらず、多結晶シリコンでは有力なメーカーの1つであることに違いはありません。
しかし、最近の長期間保証の流れからは一歩遅れて、無償保証は10年となっているため、この点をどのように見るのかで評価が分かれるところです。
長州産業
企業としての知名度では、大企業にどうしても劣るため、表舞台に出てくることは少なかった長州産業ですが、パナソニックのHIT製品をOEM販売してきたことで徐々に知られるようになり、自社製品も多く手掛けています。
自社ブランドのGシリーズは、HITのヘテロ接合とは異なり、構造を逆転したリアエミッタヘテロ接合と呼ばれる方法で、HITと同程度の高い変換効率を保ちます。
現在はHIT製品を前提に考えなくても、Gシリーズや他の単結晶シリコン製品を加え、長州産業だけで1つのメーカーとして認識したほうがよさそうです。
また、長州産業でも25年保証がスタートしているので、他のメーカーと比べて見劣りするような要素はなく、第2のHITとして注目されます。
カネカ
アモルファスシリコン製品を実用化している、数少ない国内メーカーです。
美しい外観を保つことがコンセプトになっており、いかにも太陽光発電パネルというイメージから逸脱した高い調和性が魅力です。
アモルファスシリコン単体では、発電効率が悪いことから、カネカでは薄膜の多結晶シリコンを積層することで、アモルファスシリコンの弱点を補っていますが、高変換効率の単結晶シリコン製品とは差を埋められていません。
また、保証期間は10年(81%未満)と、現在のスタンダードには及ばないので、性能や保証を重視するよりも、デザイン重視の限られた層が対象になるでしょう。
なお、2015年7月には、ヘテロ結合を用いたセルにおいて、変換効率24.52%に成功しており、実用段階に入れば、今後期待できるメーカーなのは確かです。
東芝
普及品では、世界で最高の変換効率20.1%を誇るパネルを提供しています。
ただし、製品自体はサンパワーのOEMなので、東芝ブランドを期待した人にとっては、若干不満なのかもしれません。
とはいえ、消費者にしてみれば、世界最高水準のパネルを、国内メーカーの保証を受けながら使えるメリットが大きいはずです。
変換効率が価格の高さに結びついているため、面積の小さい住宅用になるでしょう。
保証内容は、10年の無償保証をベースとして、20年保証(パネル20年、システム15年)と、15年保証の2つを有償で用意しています。
フジプレアム
技術大国日本を世に知らしめるかのごとく、高い技術力で極薄の化学強化ガラス(0.8mm)を採用し、軽量化に成功した製品「希」を提供しています。
「希」製品は、単結晶17%台、多結晶16%台と及第点の変換効率です。
特に屋根設置においては、パネルの重さが建物の耐震性能に関わってくるため、パネルは軽量であるに越したことはありません。
また、カーポートなど、耐久性に不安がある設置場所にもメリットは大きいです。
他に、自動追尾(トラッキング)システムを用意しているのも特徴的で、野立てで活用が期待されますが、パネルが動くスペースと面積効率の判断は必要でしょう。
パネル保証が15年(80%)というのも、もう一声欲しい水準です。
海外メーカー
価格の安さから、日本市場に大きな影響を与え続けてきた海外メーカーは、ほとんどが米国と中国のどちらかです。
特に中国メーカーは、国内に製造コストの安さと大きなマーケットを持ち、現在は中国メーカーなしで、世界の太陽光発電を語れないほどのシェアになっています。
ハンファQセルズ
太陽電池の生産では、世界的なシェアを誇っていたドイツのQセルズが、韓国のハンファグループに買収されることで誕生しています。
Qセルズが持つ高い技術力に、ハンファグループの資本力が加わることで、近年日本市場に食い込んできたメーカーと言えます。
住宅用の単結晶シリコン製品と、産業用の多結晶シリコン製品を提供していますが、産業用は変換効率が15.9%と高く、多結晶シリコン製品にしてはよい部類です。
価格次第では、野立て設置での活用が進みそうです。
もはやスタンダードになりつつある、25年保証(住宅用は12年まで81%未満、25年まで72%未満、産業用は5年ごとの細かい設定)も取り入れているので、保証面での不安もないでしょう。
サンパワー
東芝やシャープにOEM供給していることで、もはや海外メーカーの印象が薄い米国サンパワーですが、何と言っても最大の特徴は、世界最高の変換効率を持つ単結晶シリコン製品を供給している点です。
設置面積が小さい住宅用では、価格が高くなっても発電量を増やしたい希望があり、東芝やシャープを通じて販売実績を伸ばしているメーカーで、最高の変換効率ゆえに、なかなか価格が下がらない点だけがネックになっています。
25年保証も付いているので、予算に余裕があるなら製品・保証とも高品質なサンパワー製品は、必ず視野に入ってくるはずです。
カナディアンソーラー
世界シェア第3位(メーカーサイトより)で、2009年に日本法人のカナディアンソーラージャパンが設立されてから、本格的な日本市場参入を果たしています。
カナダで創立されていますが、生産拠点が中国で中国メーカーのイメージが強いです。
そのためか、品質を疑って敬遠する層も一定数存在するとはいえ、単結晶の高い変換効率が、比較的安い価格で手に入ることで人気もありますし、何より世界シェアの高さは、多くの人に受け入れられていることを意味しています。
パネルに25年保証 (システム全体では10年保証)があり、スタンダードな製品でも積雪荷重が高水準であるため、豪雪地帯で採用しやすいパネルになっています(カナディアンソーラーだけが高水準を満たしているわけではありません)。
トリナソーラー
日本法人を持つ急成長の中国メーカーで、インリーソーラーとしのぎを削り、今後世界一になりそうな勢いを持っています。
他の中国メーカーと同様に、最大の特徴が安さであるのは変わらず、価格重視なら間違いなく選択肢に入ってくるでしょう。
価格の安さから、野立てでの大量設置も考えられますが、単結晶シリコン・多結晶シリコン共にコストパフォーマンスが高く、住宅用としても十分に成り立つので、後は消費者が中国メーカーをどのように評価するだけではないでしょうか。
出力保証は段階的で、最終的には25年目で80%台(単結晶80.18%、多結晶80.7%)ですから、他社と比べて遜色はありません。
インリーソーラー
世界第1位の実績で、2012年に日本法人を設立して参入してきた中国メーカーです。
PANDAモジュールと呼ばれる単結晶シリコン製品は、変換効率が17.1%と、数字だけなら他のメーカーに劣りますが、価格の安さが魅力です。
多結晶シリコンのYGEシリーズにおいても、変換効率が16.2%まで引き上げられた製品があり、メーカーでは産業用の位置付けでも、住宅用で問題なく使えるでしょう。
トリナソーラーとの競合は激しく、両社とも今後さらに価格が引き下げられれば、消費者にとって言うことなしです。
他社と同様の25年保証(単結晶:1年98%、10年92%、25年82%、多結晶:10年91.2%、25年80.7%)、製品保証に保証会社が入っていることで、海外メーカーにありがちな、撤退や破産の不安を解消する仕組みが用意されています。
ファーストソーラー
米国のメーカーで、化合物系のCdTe太陽電池を使用したパネルを供給しています。
CdTeのパネルは他にないので、化合物系ではソーラーフロンティアと並び、必ず候補に入れたいのがファーストソーラーです。
薄膜化合物のCdTeにおいては、変換効率が14%程度でありながら、化合物系に共通の高温に強い特性を持っています。
そのため、出力ロスが少なくなって、実発電量を稼ぎやすくなっています。
シリコンを使わず生産が低コストなため、価格も安いパネルなので、野立てのような大量導入に向いており、25年保証(1年97%、以降毎年0.7%マイナスまで保証)があることも後押ししています。
サンテックパワー
生産量・出荷量ともに世界第1位を誇っていた時期があり、言わずと知れた中国の最大手メーカーでしたが、債務不履行で経営破綻を起こした後は、破綻前のように業績を伸ばせていないようです。
日本のMSKを傘下に収めた頃から急成長を見せた会社だけに、事情を知っていれば、日本の技術力を取り込んだ中国メーカーという印象が強いのではないでしょうか?
ただし、現在の主力製品においては、単結晶シリコンで変換効率が17%台と、中国メーカー他社と同程度の水準になっています。
評価できる点としては、国内メーカーで最近取り入れられている、有償で機器保証を5年延長の保証システムがあることで、パネル保証は25年(12年で81%未満、25年で72%未満)です。
アップソーラー
アップソーラーは、2010年から日本に参入している中国メーカーです。
単結晶シリコン製品は16%台、多結晶シリコン製品は15%台と、単結晶シリコンではやや変換効率が劣っている程度で、この辺は実売価格次第でしょう。
注目したいのは、10年間の発電量保証が自動付帯されることで、天候不順が多く、年間発電量が予測発電量の80%に満たないときは、差額が補償されます。
通常、このような原因で補償を受けるには保険加入とするのが一般的で、メーカー側が用意しているのは珍しいケースです。
他の点についてとりわけ目立ったところはなく、パネルの25年保証 、システムで10年保証(有償で5年延長)という、中国メーカーでよく見られる保証内容です。
ジンコソーラー
日本での知名度は低いですが、メガソーラーでも採用され、世界的には上位にランクしている中国メーカーです。
単結晶シリコンでも多結晶シリコンでも、15%~16%の変換効率で、多結晶シリコン製品に16.5%の製品があり、この点は評価できます。
したがって、多結晶シリコンの実売価格が単結晶シリコンよりも安い前提なら、ジンコソーラーについては多結晶シリコン製品を選ぶ方がよさそうです。
パネル保証が25年(80.7%)なのは、他の中国メーカー水準と変わりません。
他にジンコソーラーの特徴として、MPPTという、通常パワーコンディショナーで受け持つ制御機構を、パネル側に搭載した製品が挙げられます。
MPPTは、影によって出力低下するような環境で効果を発揮するため、使い方によっては、他社製品よりも優位な可能性を秘めています。
レネソーラ
中国メーカーでありながら、栃木県にOEM生産拠点(株式会社バイテックグローバルソーラー)を持っている変わったメーカーです。
2014年春から生産が開始され、レネソーラブランドの国産品として扱われます。
これは、明らかに日本市場に対する拡大戦略(日本人の国産志向)を受けていると考えられており、品質としては変換効率16%の多結晶シリコンモジュールを提供していますから、多結晶シリコンの国産では主に京セラとぶつかりそうな予感です。
対象製品はVirtusIIで、多結晶シリコンを探しているなら候補に入るでしょう。
パネル保証は25年(10年90%、25年80%)、システム保証は10年という構成です。
まとめ
海外メーカーからOEM供給を受けている国内メーカー、国内で海外に生産拠点を持つメーカーだけではなく、海外メーカーが国内に生産拠点を持つ例まで現れて、メーカー選びは考えてもキリがないかもしれません。
世界のスタンダードは、パネルの出力保証25年にシフトしており、付いていけない国内メーカーも出てきそうですが、それでも国内メーカーの安心感は残るでしょう。
ただし、シャープのように、国内だから経営が万全というわけではなく、サンテックパワーが失速したように、経営が危ぶまれる事例もここ数年で起きています。
パネルの性能だけに捉われると、パワーコンディショナーの性能を軽視しがちですし、悩めば悩むほどメーカーをよく知るきっかけにもなるので、時間をかけて比較しながら、ベストチョイスをしていきたいものです。