3,000万円特別控除の特例で節税しよう。注意点もあわせて解説

2019年10月から2度目の消費税増税が決定しており、内閣官房長官の記者会見によるとリーマンショックのような経済情勢の悪化がない限りは予定通り施行されます。
日本にはさまざまな事柄に税金がかけられており、消費者の税負担が大きくのしかかっています。

しかし、一部の税金に対しては一定の条件を満たすと適用される特別控除が設けられています。
3,000万円特別控除の特例もその一つで、不動産を売却した際に出た売却益に対して課税される譲渡所得税が対象となっています。
不動産を売却する前に3,000万円特別控除の特例について把握し、特例を受けて節税に繋げましょう。

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3,000万円特別控除の特例とはどんな制度?

3,000万特別控除1

居住している自宅を売却して住み替える場合、売却して得た金額が多いほど新居の購入費用に充てられます。しかし、売却で得た利益には譲渡所得税が課税されるため、売却前に確認しておきましょう。

最高3,000万円までは税金が課されない

不動産を売却した際に得た利益に対して課税される譲渡所得税は、3,000万円特別控除の特例を利用すると節税に繋がります。
一般的に3,000万円特別控除の特例と呼ばれていますが、正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」といいます。

これは消費者の税負担を軽減することを目的とした特別控除の一つで、譲渡所得税の対象となる譲渡所得が3,000万円以内であれば税金が控除されるという制度です。
譲渡所得税を算出する際には、売却した不動産の所有年数5年を境に区分されており、5年以下とそれ以上では税額が異なります。

しかし、3,000万円特別控除の特例は不動産の所有期間に関係なく適用されることになっています。
不動産を売却した際に利用できる特別控除の特例には、この他にも「10年超所有軽減税率の特例」や「特定居住用財産の買換え特例」があります。
なお、譲渡所得税に関しては、以下で詳しく解説していきます。

控除を受けるための条件

3,000万円特別控除の特例は、不動産を売却した場合の全てに適用される訳ではありません。
控除を受けるためには、以下の適用条件をクリアする必要があります。

売却した不動産に対する適用条件

  • 主に居住していた住宅や土地を売却
  • 対象となる不動産に居住しなくなった日から3年後の年末までに売却
  • 災害で滅失した場合、災害に遭った日から3年後の年末までに売却
  • 建物を解体した日から1年以内に売買契約を締結

3,000万円特別控除の特例を受けるための適用条件には、主に居住用として利用する住宅であることが前提となっています。
よって、セカンドハウスや別荘といった住宅には適用されません。

買い手に対する適用条件

  • 買い手が親子などの特別な関係でないこと
  • 買い手が配偶者、または親族間でないこと

譲渡所得とは不動産などを「譲渡」した場合に課税されるため、金銭を受け取ることなく譲渡した際にも課税対象となります。
離婚に伴う財産分与で配偶者に不動産を譲渡した場合は、離婚後の譲渡になります。

従って、財産分与は離婚後の譲渡になるため配偶者とは見なされず、3,000万円特別控除の特例の適用条件をクリアできます。

売却する不動産が受けている特例との併用に関する適用条件

  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 特定居住用財産の買換え特例
  • 固定資産の交換の場合の特例 など

売却する不動産が住み替え時に利用できる「特定居住用財産の買換え特例」をはじめとした控除をすでに受けている場合、3,000万円特別控除の特例とは併用できません

売却する年に受けている特例がある場合

  • 住宅ローン控除
  • 認定長期優良住宅の特別控除

住宅ローン控除の適用は、対象となる住宅に入居してから10年間受けられます。
ただし、2007年と2008年に入居した場合には、10年と15年のどちらかを選択できていました。

場合によっては、売却する年も住宅ローン控除を申請していた可能性も考えられます。売却する年に確定申告で住宅ローン控除を受けている場合、3,000万円特別控除の特例は適用外となります。

売却した年の前年または前々年に受けた特例がある場合

  • 3,000万円特別控除の特例
  • 特定の居住用財産の買換えの特例

3,000万円特別控除の特例は、売却した年に住宅ローン控除などの特例を受けていた場合は適用外となります。
また、売却した年以外にも、その前年と前々年に3,000万円特別控除の特例などの控除を受けていた場合は適用外となります。

特例を受けるための手続き

3,000万円特別控除の特例を受けるためには、売却した翌年に確定申告しなければなりません。
なぜなら、不動産を売却した際に出た利益に対して課税される譲渡所得税は、確定申告によって納付できる仕組みとなっているからです。

確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までの1カ月間が設けられています。
この期間内に、確定申告書と「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」を添付して管轄の税務署に提出します。

なお、近年ではe-Taxといったオンラインで確定申告できる方法も多くの人に利用されています。この方法は、管轄の税務署に行かなくても自宅から手続きできるので便利です。

不動産売却で利益を得た時に掛かる税金

家売却税金1

不動産を売却する際には、売買契約書に貼付して納付する印紙税や所有権移転登記に対して課税される登録免許税など、さまざまな税金が絡んできます。
ここでは、不動産を売却した際に出た利益に対して課税される譲渡所得税について解説していきます。

譲渡所得に課される所得税と住民税

印紙税は売買契約時に納付しますが、譲渡所得税は不動産を売却した翌年に行う確定申告によって納付する仕組みとなっています。
譲渡所得税は所得税と住民税から成り立っており、2013年からは東日本大震災の復興支援を目的として制定された復興特別所得税が課税されています。
ただし、不動産を売却した際に利益が出なかった場合は譲渡所得税を納税する必要はありません。

譲渡所得税の計算方法

不動産を売却した際に出た利益に対して課税される譲渡所得税の計算方法は複雑で、以下のようにまずは課税対象となる課税譲渡所得を算出します。

課税譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除

譲渡価格とは不動産を売却した際の価格を指しており、取得費とは売却した不動産を取得した際にかかった費用を指しています。

また、譲渡費用は不動産を売却した際にかかった仲介手数料や印紙税、何らかの原因で契約解除に至った際に支払った違約金などを指しています。
譲渡所得税は、課税譲渡所得に定められた税率を乗じて算出します。税率は不動産の所有期間5年を境に区分されており、5年以下を短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得と呼ばれています。

区分所得税(税率)住民税(税率)合計税率
短期譲渡所得30.63%9%39.63%
長期譲渡所得15.315%5%20.315%

このように不動産の所有期間が5年以下の場合よりも、5年を超える場合の方が税率が低くなっています。

控除制度を使って節税することができる

譲渡所得税は39.63%、もしくは20.315%と決して低い税率ではありません。
不動産を売却した際に出た利益が多いほど税額がアップしますが、控除制度を利用することで節税に繋がります。

譲渡所得税を算出する際には、さまざまな控除制度が利用できます。課税対象となる課税譲渡所得から差し引ける控除は、以下のような制度が挙げられます。

  • 3,000万円特別控除の特例
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 特定居住用財産の買換え特例
  • マイホームを売ったときの軽減税率の特例

このような控除制度を利用すると節税に繋がりやすいと言えますが、それぞれに適用条件が設けられているため、事前に確認しておきましょう。

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3,000万円特別控除を受けた場合のシミュレーション

3,000万特別控除3

3,000万円特別控除の特例が適用された場合、一体どのくらいの金額を納税しなければならないのでしょうか。
課税対象となる課税譲渡所得は売却価格や所有期間によって異なるため、事前にシミュレーションしておきましょう。

まずは一括査定サイトで売却価格の相場を調べてみよう

大まかな課税譲渡所得を知りたい場合、不動産がどのくらいの金額で売却できるのか把握しておくことが大切です。まずは一括査定サイトを利用し、売却価格の相場を調べてみましょう。
一括査定サイトは複数の不動産会社に一括で査定を依頼できるため、各社から提示された査定額を比較することで大まかな相場を把握できます。

大まかな相場を把握すれば、3,000万円特別控除の特例が適用された場合に支払う税金のシミュレーションができます
なお、ほとんどの一括査定サイトでは非常に多くの不動産会社と提携しています。
そのため、複数社に査定を依頼することで自分に合った業者を見つけやすいことも魅力の一つです。

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【事例】所有期間10年・売却価格5000万円の場合

それでは、3,000万円特別控除の特例が適用されたと仮定したシミュレーションをしてみましょう。なお、各項目については以下のような金額に設定しています。

所有期間10年
譲渡(売却)価格5,000万円
譲渡費用200万円
取得費1,000万円

これらの金額を、以下のように課税譲渡所得の計算式に当てはめます。

譲渡価格5,000万円 -(取得費1,000万円 + 譲渡費用200万円)- 特別控除3,000万円 = 課税譲渡所得800万円

課税譲渡所得は800万円、所有期間が10年なので長期譲渡所得の税率を乗じると以下のようになります。
800万円(課税譲渡所得)× 20.315%(長期譲渡所得の税率)= 162万5,000円(譲渡所得税)

さらに、不動産の所有期間の場合は「10年超所有軽減税率の特例」が併用できます。
800万円(課税譲渡所得)× 14.21%(10年超所有軽減税率の特例の税率)= 113万7,000円(譲渡所得税)
この場合は税率が14.21%となるため、113万7,000円が譲渡所得税の税額です。ちなみに所有期間が5年以下の短期譲渡の場合、以下のような税額となります。
800万円(課税譲渡所得)× 39.63%(短期譲渡所得の税率)= 317万円(譲渡所得税)

このように不動産の所有期間によって税率が異なり、所有期間が5年以下の場合では317万円と税額が高額です。
10年超所有軽減税率の特例を併用した場合と比べると、長期譲渡所得の税額よりも約50万円、短期譲渡所得の税額よりも約200万円の差が生じます。

3,000万円特別控除を受ける際の注意点

3,000万特別控除

3,000万円特別控除の特例を受ける際には、すでにご紹介したようにさまざまな適用条件をクリアしなければなりません。
さらに、以下のようなケースでは控除額が複雑になったり、適用が認められない可能性があるので注意が必要です。

マイホームが共有名義になっている場合

近年は夫婦共働き世帯が増え、今後も増えることが見込まれています。
そのため、住宅を購入する際には夫婦の共同名義となっているケースが多い傾向にあります。

ただ、3,000万円特別控除の特例を受ける住宅が共同名義の場合、控除額が複雑なので注意が必要です。一人の名義だった場合、譲渡所得が3,000万円までは控除されるので問題ありません。

しかし、控除の適用は共有者全員で3,000万円ではなく、共有者一人につき最高で3,000万円となっています。
そのため、インターネット上にある一般的なシミュレーションでは容易に税額を計算できない可能性もあります。

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居住用の住宅として認められないケース

3,000万円特別控除の特例を受けるためには、主に居住用として利用する住宅であることが前提です。そのため、以下のように売却した不動産が居住用として認められないケースもあるので注意が必要です。

  • 特例を受けることを目的として居住し始めたと判断された場合
  • 新居の建築中に仮住まいとして居住している住宅
  • 一時的な目的で居住したと判断された場合
  • 趣味や娯楽、別荘として利用することを目的として取得した住宅

なお、単身赴任などで住宅の名義人が主に居住していない場合は、転勤が解消された際にはその住宅に居住することが予測されるため、控除が適用されます。

特別控除を使って税金を抑えよう

3,000万特別控除5

3,000万円特別控除の特例が適用された場合の税額を知るためには、まずは売却を予定している不動産の相場を把握することが大切です。
一括査定サイトを利用すると相場が把握できるだけでなく、仲介を依頼する不動産会社探しに役立ちます。

より高値でスムーズな売却を実現するためには、不動産会社選びが重要です。また、不動産を売却すると譲渡所得税の税額が気になりがちですが、3,000万特別控除の特例を利用すれば節税に繋がります。
地価の上昇によって売却益が大きく出ると予想される不動産でも、3,000万円特別控除の特例を利用して多額の税金を抑え、快適な住空間を手に入れましょう。

最後に、不動産売却の全般も今一度おさらいしてもよいでしょう。

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