売却する時期によって、譲渡益にかかる税率が変わることを知っていますか?
売却時に利益が出ると払う税金は、取引額が大きと高額になる可能性があります。
ここでは、短期譲渡所得と長期譲渡所得とはどのようなものなのか。
また、どちらの方が税金の支払いに有利なのかを見てみましょう。
不動産の短期譲渡と長期譲渡の違い
まずは、短期譲渡所得と長期譲渡所得のそれぞれの税率やどのような特例が利用できるかを見てみましょう。
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所有期間の判断
不動産は売却する時に利益がでると譲渡所得税が課税されます。この税金はその不動産を購入後どれだけの期間が経過しているかで税率が変わります。
そのため、税額を計算する時にはこの期間を正確に計算しないと、支払う税金額が異なり損をする可能性があります。
原則、その不動産を取得した日からカウントして、売却した年の1月1日で何年を経過しているかで年数を数えます。そして、5年に満たない場合には短期譲渡所得、超える場合には長期譲渡所得となります。
所得税や住民税の税率
譲渡所得がある場合に課税される税金には、所得税と住民税があります。これらの税率を表にまとめたものが以下のようになります。
所得税 | 住民税 | 合計税率 | |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
そして、復興特別所得税が2013年から2037年までの間、2.1%が基準所得税額に課税されます。
上記の表でもわかるように短期と長期の税率を比べると、2倍近い差があり支払う税額にも大きく差がでることがわかります。
また、譲渡所得は売却代金ではなく、売却代金から不動産の購入時にかかった費用や売却時にかかった費用を引いたものに課税されます。
そのため、税額を計算する時には、取得した時の金額や譲渡に関わる費用を調べて計算する必要があります。
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利用可能な特例
特例 | 所有期間 |
---|---|
マイホームを売った時の3,000万円の特別控除の特例 | なし |
マイホームを売った時の軽減税率の特例 | 10年 |
特定のマイホームを買い換えたときの特例 | 10年 |
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | 5年 |
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | 5年 |
不動産の売却時には利用できる特例があれば大きく節税できます。
3,000万円の特別控除の特例は所有期間に関係なく利用できます。そして、その他の4つの特例は長期譲渡所得のみの利用です。
マイホームを売った時の軽減税率の特例は、所得税10%、住民税4%と長期譲渡所得の税率よりも更に低くなります。
ただし、この税率は課税譲渡所得額の6,000万円までの部分になります。そして、この特例は3,000万円の特別控除と併用できます。
また、不動産の売却時には損失が発生する場合もあります。損失が出た場合には、その損失を他の所得と損益通算できる特例があります。
そして、その年で損益通算できない分は翌年から3年間繰越控除ができます。どちらも自分が住んでいた家の売却か買換えの場合に利用できます。
最後に買換えの特例は、税金の支払いがなくなるものではありませんが、支払うべき税金を将来の売却時へと先延ばしできる特例です。
それぞれの特例には適用条件がありますので、利用の際には税理士に相談するとよいでしょう。
不動産の短期譲渡の税率が高い理由
かつてバブルの時代には、土地の価格は高騰し、多くの人が投機のために土地を買いあさりました。そして、短期での購入・売却を繰り返して多くの利益を上げました。
転売を重ねるごとに土地の価格は更に上がり、そのため、当時、本当に土地を購入して家を建てて住みたい人達が土地を購入できなくなりました。
このような土地転がしを防ぐために、短期での不動産の譲渡の際の税率を高く設定し、税金の支払いを重くしたものが短期譲渡所得です。
近頃では、バブル期のような短期間での地価の上昇は期待できないため、土地転がしという言葉自体が聞かれなくなっています。
しかし、その頃に設けられた短期での転売を防ぐ目的の短期譲渡所得の税率は今も採用されています。
不動産売却時にかかる税額を計算する方法
長期と短期では同じ売却益の場合、どれくらい支払う税額に差が出るのかを計算してみましょう。
長期譲渡の場合
長期譲渡の場合にかかる税額の計算は、譲渡価格から取得費と譲渡費用を引いた課税譲渡所得金額に税率を乗じることで算出できます。
700万円の課税譲渡所得がある場合の税額の計算をしてみましょう。
復興特別所得税 105万円 × 2.1% = 22,100円
住民税 700万円 × 5% = 35万円
税額合計 105万円 + 22,100円 + 35万円 = 142万2,100円
短期譲渡の場合
短期譲渡所得は、長期譲渡所得に比べて税率が高くなります。そのため、同じ不動産の売却でも支払う税額も大きくなります。
700万円の課税短期譲渡所得がある場合の税額の計算は以下のようになります。
復興特別所得税 210万円 × 2.1% = 44,100円
住民税 700万円 × 9% = 63万円
税額合計 210万円 + 44,100 + 63万円 = 277万4,100円
このように、いつ売却するかで支払う税額に大きな差がでることがわかります。
不動産売却で短期譲渡を選ぶメリット
特に活用していない不動産の場合には、早く売ることで得るメリットはとても大きいです。売却することで税金や物件の維持に関わる費用もなくすことができます。
建物の築年数が浅いため高く売ることができる
建物は年数が経過するほど劣化し、その分価格が下がります。そのため、特に5年以内のような築年数が浅く劣化が少ないうちなら、高く売れる可能性があります。
そして、不動産市場には築10前後の建物は、経年劣化もあり、売りに出されている件数も多くライバルも多くなるため、価格も5年以内と比べると低い金額での売却となります。
そのため、5年を超えるのを待つ間にも価格は下がり続けるため、早めに売却する方が手残りを多くできる可能性があります。
固定資産税や都市計画税の負担が軽くなる
不動産を所有している人には、固定資産税や場所によっては都市計画税の支払いがあります。これは所有している限り課せられるもので、住んでいるかどうかは関係ありません。
そのため、税率が下がる5年を経過するまで売却を待っていると、その間にも固定資産税等の支払いは続きます。
固定資産税評価額が2,000万円の不動産だと、年間28万円の固定資産税の支払いがあります。そして、5年だと140万円にもなります。
よって、これらの税金の支払いを考えると、活用していない不動産であれば5年を超えるのを待つ前に売却した方が得な場合があります。
また、マンションの場合には、これらの税金の他に月々の管理費や修繕積立金の支払いがあります。
このように、ランニングコストを考えると譲渡時の税金の支払いを抑えるよりも、早めに売却したほうが良い場合があります。
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不動産を短期譲渡する場合の節税のポイント
支払う税額を減らすためには、課税される譲渡所得を減らすことが大切です。そして、特例が利用できれば大きく節税できます。
取得費や譲渡費用は漏れなく計上する
税額を計算する時の、課税譲渡所得金額は譲渡価格から取得費や譲渡費用を引いたものになります。
そのため、この取得費と譲渡費用をもれなく計上することで、課税する元の金額を減らすことができるため、支払う税額も減らせます。
したがって、税額を計算する前に、取得費や譲渡費用を調べる必要があります。取得費や譲渡費用にはどのようなものが含められるかは以下の表を見てください。
取得費 | 譲渡費用 |
---|---|
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そして、取得費を調べても相続した物件の場合には書類が見つからない場合もあります。
このような場合には、譲渡価格の5%を取得費とできます。なお、相続した不動産の売却時には取得費に相続税の一部を計上できる場合があるので覚えておくとよいでしょう。
建物の3000万円控除を使う
マイホームを売る場合には、課税譲渡所得金額から最大3,000万円が控除できる特例があります。
この特例の利用には、所有期間は関係なく、自分が住んでいたもので親族などの特別な関係間での売買でないことなどの条件があります。
また、この特例は3年に1度しか利用できない特例なので注意しましょう。この特例を適用すれば課税譲渡所得金額を大きく減らすことができるので、大きく節税することができます。
住んでいる戸建てやマンションの売却の場合、この特例で税金の支払いがなくなるケースが多いです。ただし、この特例を利用すると、同時に買い替えを検討している場合の新居の住宅ローン控除が
利用できないため注意が必要です。
2019年10月から2度目の消費税増税が決定しており、内閣官房長官の記者会見によるとリーマンショックのような経済情勢の悪化がない限りは予定通り施行されます。日本にはさまざまな事柄に税金がかけられており、消費者の税負担が大きくのしかかって[…]
土地の特例控除を使用する
不動産の売却時には特別控除を利用することで、税金の負担が少なくなります。
そのため、売却時に利用できる特別控除の特例がないかを確認するとよいでしょう。
- 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合の1,000万円の特別控除
- 収用交換等の場合の5,000万円特別控除の特例
- 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円の特別控除
- 特定住宅造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円の特別控除
- 農地保有合理化等のために土地等を譲渡した場合の800万円の特別控除
これらの特例にはそれぞれに適用条件があり、条件を満たすと利用できます。なお、控除できる金額は、それぞれの特例の控除金額内で譲渡益の金額が限度額となります。
また、年間を通しての総控除額は5,000万円までと定められています。
行政機関や国からの要請で売却する時には、これらの特例が利用できる可能性があるので確認してみるとよいでしょう。なお、これらの特例は所有期間に関係なく短期譲渡所得でも利用できます。
条件によって短期譲渡が得になる場合があることを理解しよう
不動産の売却は高額の取引となるため、利益が出た場合の税額が大きくなる場合があります。
そのため、少しでも税金の支払いを抑えるためには、事前に売却時の課税の条件を知って試算することが大切です。
長期譲渡所得は短期譲渡所得に比べると税率が低くなるため、お得に感じるでしょう。
しかし、自宅の売却であれば特例を利用すれば税負担がなくなる可能性があるため、あえて長期譲渡所得になるまで待つ必要がありません。
また、所有することによってかかる費用や税金もあるので、所有する不動産によっては短期での売却が適している場合があります。
そのため、不動産の売却時には、事前に税額や費用を計算して売却に備えましょう。
運営会社 | 株式会社LIFULL | |
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運営開始時期 | 2014年 | |
対象エリア | 全国 | |
累計利用者数 | 612万人 | |
提携会社数 | 約1,700社 | |
同時依頼社数 | 6社 |